月と桜と人魚の哀歌

□第九幕
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歌い終わり、ごんべえはようやく我に返り自分が未だリクオの腕の中にいることを思い出した。

一気に羞恥が頭によぎり、すぐに離してもらおうとリクオを見上げた。

だが、言葉が詰まった。

そこには幸せそうに微笑みかけるリクオがいたのだから。

ごんべえはまた胸が高鳴るのを感じた。



この方は私の殺す気か・・・



そう思ってしまった。

そんなごんべえを気持ちも知らず、リクオは満足そうに笑った。




「本当にキレイな声だな…あんたの声は」




そういうリクオにごんべえは恥ずかしそうに顔を伏せた。




「そんなことはございません、私の歌など…」




すると左頬にふわりと温かいものを感じた。

それがリクオの手だ分かり、ごんべえは思わずリクオを見上げた。




「いいか、オレのことを見続けろ。絶対に逸らしたいけねぇからな?」





その瞳は強くごんべえを捕らえた。

ごんべえは何も言えずリクオに見惚れた。

リクオは真剣な眼差しでごんべえを見て、顔を近づけた。

月明かりによってその色気がいっそう深まった、

一方のごんべえも同じように月明かりによって、まるで月に愛されしかぐや姫の様であった。


そしてリクオはゆっくりと涼やかに笑いさらに顔を近づけて、その距離残り一寸も満たない。

ごんべえは悲鳴を上げることも忘れるほど、リクオを見つめ続けた。




「ごんべえ…」




リクオはうっとりするほど甘く初めて名前を囁いた。




「オレの女になれよ」



そう言って、口付けた。

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