月と桜と人魚の哀歌
□第七幕
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「っ!?」
妖怪・・・?
「もう何してんの二人とも!!」
・・・来たっ。
ごんべえはすぐにリクオの傍に移動した。
「リクオ君だよね?」
いつの間にか目の前に二人の男が立ちふさがってた。
「・・・!?だ・・・誰!?」
リクオは固まったかのように動かない。
ごんべえは二人に向かって敵意むきだしの様子だった。
カナはリクオの知り合いかどうか確認をしたが、残念ながら違う。
するとさっきの大きな男子生徒がケンカを売るかのように詰め寄ろうとした。
が、リクオはなんとかなだめさせた。
その様子を見て黒髪の男は小さく笑った。
「いや――――聞く必要はなかったか―――――」
ごんべえは小さく足を前に出し、リクオの前に立とうとした。
だが、リクオはそれを手で制した。
「っ!!」
何故止めると問うようにごんべえは見上げた。
しかしリクオはただ相手を見るばかりだ。
「こんなに似てるのだから。ボクと君は」
向こうの方が早くリクオに近づき、肩に手を置いた。
「若く才能にあふれ血を――――継いでいる。だけど…君は最初から全てをつかんでいる。ボクは――――今から全てをつかむ。ボクもこの町でシノギをするから 」
その言葉を理解できずリクオは思わず戸惑った。
だが相手はそのまま手を離し、背をさっと向けた。
リクオはその意味を知るために詰め寄ろうとしたその時。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ・・・」
後ろから舌の長い男のほうが近づいてきた。
「両手に花か〜〜〜〜〜!?やっぱ大物は違うぜよ〜〜〜」
そう言った途端、近くにいたカナをペロと一舐めした。
「ひぃ!?な、何〜〜〜〜〜!?」
「カナちゃん!?」
その突然の行為にカナは一気に顔を引きつらせ、おびえた様子で悲鳴を上げて、リクオにしがみついた。
そんなカナの反応を見て、舌の男は厭らしく笑いながら遠ざかっていく。
「あいさつじゃ」
ごんべえはすぐに後を追いかけようとした。
だが、動けなかった。
何せ、いつの間にか、敵が6人加わっていたから…
「………」
「わ、若……」
「なんで…何よ…アレ…今まで…あんなのいなかったのに…」
カナはリクオの後ろに隠れて怯えながら息を荒げていった。
呼吸が上手くいかないようだ。
ごんべえは兎に角リクオの近くに近づいて、護衛に専念した。
だが、敵はそれ以上のことはせず、そのまま消えてしまった。
ごんべえはいつの間にかリクオの制服の端をつかんでいることに気づいた。
「(っ!?もしかして、畏れた…?)」
「名無しのさん…?(震えている…)」
リクオがごんべえの変化に気づき、心配そうに顔を覗き込んできた。
ごんべえは自分がした行為を恥、ぱっと服をすぐに離し一歩後ろに引いた。
リクオは何故かごんべえのその行為が無性に切なくてならなかった。
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