月と桜と人魚の哀歌

□第三幕
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「えーと、今日は転入生が来ました」


担任が転入生の名前を黒板に書いていく。

リクオは朝の電車のせいで少し頭が痛かった。

転入生どころではない。

すると担任が転入生の紹介をした。


「隣り町から来た、名無しのごんべえさんです」


「ええ?」


ばっとリクオは思わず顔を上げた。

そしてふと昨日のあの人魚のことを思い出した。


「(まさか彼女じゃ・・・)」


そう思い転入生の顔を見た。

だが、顔をマスクで半分ぐらい見えなくなっているし、何よりあの美しい真紅の瞳ではないのが真実だ。

すぐに別人だと認定できた。

クラスの男子の反応は少し可愛いとかそういうことを言っていたが、本当はあの純白の長袖のブラウスから分かる豊かな胸に視線が釘付けだった。

おい、巻さんよりあんじゃね?などと口々に言っている。

巻は少し悔しそうにしていた。


「名無しのさんは事情があって話すことが出来ません。会話は筆談でします。だからといって話しかけないとかはないように」




「・・・?(声が出ないのかな?)」


リクオは不思議に思ったがすぐにチャイムが鳴りSHRが終わった。

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