偽りの鳥

□02
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【02:入国手段】










その美しさに見惚れ、言葉を発する事を忘れた彼らは数分後、別の意味で言葉を失う事となる。




((で、でかっ…!!))




歩き続けようやく国境の正門まで着いたのは良かったが、正面にそびえるその門の巨大さに目を見張った。



見上げるだけで首が疲れる…。


まるで王国を覆い隠すかの様にそびえる、城壁と同じ高さの扉は簡単に開く事はなさそうだ。


商人の国とはいえ、入れてくれと頼んでもそう易々と門を開けてくれそうにはない。
正直、この国家防衛の凄さには感心を通り越して恐れさえも感じる。




「どうやって入る?兄さん」

「どうやってって…。オレ達は別に疾しい事企んでねーんだから、そのまま正門から行くに決まってんだろ?」

「うん、そうだけど…」

「…?」

「おい、そこのお前ら。何用だ」




門の前に立っている門番の一人が二人に話し掛けた。

彼だけではない、隣に立っている別の門番や近くの窓口からこちらを伺っている男達は皆神妙な顔をしてずっとこちらを見ている。




「あ〜…ロイ・マスタング大佐の代理で王継承式に出席するようにと言われて参りました。鋼の錬金術師エドワード・エルリックです」

「ボクはその弟のアルフォンス・エルリックです」




エドワードは、カバンの中からパスポートと大佐に宛てられた招待状を、ポケットの中から銀時計をそれぞれ取り出して自分達の身分を証明した。


この銀時計は国家錬金術師の証としてアメリスト国の大総統から与えられる物だ。これを見せると様々な特権がつき、大抵どんな場所にも簡単に通してくれる。
エドワードいつもと変わらない感じで銀時計を見せた。









  しかし…











「駄目だ。通すわけにはいかない」

「!何でだよ!!オレ達は招待客だぞ!」

「エドワード・エルリックという者が来るとの報告は受けてない。一週間後の王継承式を狙って来る不届き者がいるんでな。悪いがお前達を通すわけにはいかない」

「何で……っ!」




異を唱えようとして、止めた。なぜなら眉をひそめた男の視線は、エドワードではなくアルフォンスを捉えていたからだ。



アルフォンスの先程のためらいはこのためであった。

《子供と鎧男》この奇妙な二人組は何処へ行っても怪しまれないことは無かった。その度に銀時計で身分を証明するのにエドワードは慣れっこだった。




それが、今回通じなくなるとは……

























「困ったね。必ず入国するように言われたのに、入国出来ないなんて…」




一旦諦めて、正門を後にした二人。




「ふざけんじゃねーぞ…!こっちはこんな腹すかせてるんだ!入れねーとは…」




やっとの事で国境までたどり着けたと思えば入国出来ない。空腹感も相まって、怒りが最高潮に達したエドワードはピクピクと身体を震わせながら、パンッと両手を合わせた。




「こうなったら、錬金術で穴を…」

「Σ兄さんっ!!何するつもり!?不法侵入になるよ!!」

「うるせー!!このまま引き下がってられっか!!」




もはや空腹のせいで何が悪い事かも分からなくなってしまっているエドワードは、弟の制止を振り切り穴を開けようと足場の地に触れた。




「フフフフ腐…バレなきゃ、良いんだよ。バレなきゃ」

「Σ兄さんの極悪人!!」

「えーとここからの距離は…」

「止めときなさい」






((Σドキーっ!!))






突然掛けられた声に驚き、慌てて手を背に引っ込めながら振り返る。いつの間にか背後には一台の荷馬車があった。その荷馬車の中から白髪混じりでタレ目のご老人がひょいと姿を現した。どうやら声の主は彼のようだ。




「お前さん達、この国に入りたいようじゃが、一度断られたら王位の継承が済むまで入れんよ」

「それはどういう意味なんですか!?」

「王位継承式に向けて入国審査が厳しくなってしまってな。いつも来る商人のわしらでさえ怪しいと思われたら入国はできないんじゃ。新顔なら尚更だろう」

「そんな…!?ボク達どうしても早く入国しないといけないんです!!」




アルフォンスは正門の処へ駆け戻って必死になって訴えかけた。しかし門番は黙って首を横に振るだけだ。その様子は、遠くにいたエドワード達にも見えた。




「何があるのか知らんが、諦めた方が…」

「…マジかよ……」






  フラ…




「っ…!!?」




突然、エドワードの足元がぐらついた。とっさに膝をつき持ち堪えたがフラフラと平行感覚を失ってくる。周りの声も次第に聞き取りづらくもなってきた。




(なんだ…!?景色も霞んできやがった。くそ…早くしない…と…)







  …ドサッ!






「おい!どうしたボウズ!?」




次の瞬間、先程まで大声で喚いていた少年が目の前で倒れた。

ご老人はぎょっと目を見開き、慌てて荷馬車から降りて少年の身体を持ち上げてみた。ケガや熱はないようだが明らかに顔色が悪い。




「大変だ鎧の兄ちゃん!!連れの子供が倒れたぞ!!」






「えっ!兄さん兄さぁん…!!」





薄れゆく意識のなか、遥か遠くの方から聞こえる弟の声に答えようとかすかに左腕を伸ばそうとした。





 だが力尽き、





空を掴んだ腕はだらりと地を滑った──…





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あとがき

夢小説なのに夢主が出て来てない…(-_-;)



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