庭球

□幼馴染なキミ
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「初めまして!姫島愛里っていいます」

転校生が来た。



「ユキ」
「……なに?」

転校生を見つめたままのルイに自分も前を向いたまま返答する

「なぁんか嫌な予感するから、顧問にマネージャー拒否言っといたほうがいいよ」

「わかった」
ルイの予感は当たるからなあ。

それに、こちらを熱心に見つめる転校生の視線。あながちルイの忠告は的を射てるのかもしれない。


「足止めはしといてあげるから」
この後すぐ行ってきたらいいよ

「ありがと」
HRが終わって、授業が始まるまでのほんのわずかな時間でも、あの様子だと話しかけてくるかもしれない。

「あとでアイス買ってね」
「はいはい」
御安いご用だよ。

それだけであの厄介そうな女子を避けられるならね。

意識をルイとの会話から転校生へ変えると、俺たちとは反対側の廊下側に座ったらしい。
直接視線を向けると厄介なことになりそうだからあくまで、顔は前を向いたままだけど。
熱烈な視線を転校生から感じる。


この調子だと絶対話しかけてくるな。
ま、ルイのことだから上手く足止めしてくれるだろうけど。

あんな女がもしマネージャーになったらと思うとぞっとする。
それを阻止するためにも、顧問にマネ不要と行ってこよう

〜*〜


キーンコーンカーンコーン

「あのっ」
「やあやあ転校生さん、」
「えっ、あの…」
「(いってこい)」
「(ありがと)」

案の定こちらに駆け寄ろうとした転校生をルイが上手く遮っている。
この隙にさっさと教室をでて職員室へむかう。

「お、幸村どうした?」
「テニス部にマネージャー希望が来ても受理しないでほしいことを言うの忘れたんで」
「なんだそんなことをわざわざいいに来たのか?」
「はい。さっき転校生がクラスに来たんですけど彼女はテニス部のルールを知らないだろうから」
「なるほど。わかった。マネージャー希望は断っておく」
「お願いします」

〜*〜

「しかし、いいのか? マネージャーは必要だろう?」
「自分のことは自分たちで出来ますし、手が回らないときはルイが手伝ってくれますから」
「ああ、雑賀か。あれはもう「臨時」とってマネージャーだな」
「だからこれ以上マネージャーはいらないんです」
「わかった。そろそろ教室にもどれ」
「お願いします。失礼しました」


〜*〜


「おかえり」
「ただいま」

チャイムが鳴るギリギリに教室に滑り込み、席につく。もちろんわざとだ。教室に入る際に転校生が立ち上がったが、チャイムで残念そうに座り直していた。

「ユキやテニス部に興味津々だったよ彼女」
「……言ってきてよかった」
「あれじゃ昼休みにでもマネージャー希望だしてただろうね」
「顧問にはしっかり頼んできたよ」
「それじゃあ安心だ」

クスクス笑いを漏らしたルイに自分も口角が上がる。



〜*〜
昼休み

職員室には転校生の姿が

「男子テニス部のマネージャーやりたいんです!!」
「あーごめんなぁ。今マネージャー募集してないんだわ」
「ええ!?」

提出プリントを持ってきていたルイはちょうどその場面を目撃してほくそ笑む。

顧問と目が合ったので軽く笑っておく。顧問はウインクで返してきた。

呆然とする転校生を尻目に、ユキたちがまつ屋上へ向かう。

でもその前にっと……

「先生。紙とガムテープと油性ペン貸してください」
あ、違った紙はください。
「おお使ったらちゃんと返せよ」
「らじゃー」

目当てのものを手に今度こそ屋上に向かう。

ユキに報告っと

〜*〜
屋上の扉を開けるとレギュラー陣がそろっていて自分を待っていたらしかった。

「やっほー遅れてごめんね」
「おかえり」
「ただいまー。そうだ柳これに『整備中につき立入禁止』って書いてくれない?」
「フッなるほどな」

持ってきた紙とペンを柳に差し出すと趣旨を理解してささっとその場で書いてくれた。

「これでいいか?」
「かんぺきありがと」

受け取った紙をすぐに屋上へ続く扉に貼る。

「よっしゃ」
これでいいや。

納得してみんなのところに戻ると柳以外は訳が分からないって顔をしていた。ユキはなんとなくわかってそうだけど。

「どうしたんだよぃ?」
「何かあったのか?」

みんなを代表して丸井と真田が尋ねる。

「それがね――」

ガチャガチャガチャッ

「っもう! なんで開かないのよ!? テニス部は屋上にいるんじゃないの!?」

レギュラー陣の疑問に答えようとしたユキを遮ってドアノブをゆする音と女子生徒の甲高い声が扉越しに聞こえた。

「「「「「………………………」」」」」

一斉に静まり返るレギュラー陣を横目に間に合った―、と息をついた。

あの声は転校生のものだ。

さっき貼ったあとに鍵も閉めておいたのだ。転校生が職員室を出た後にここ屋上に来ることはないかと思っていたが、一応念のためにとかけておいたのだ。

鍵かけててよかった―これでドアが開いてたら張り紙の意味なくなってたしよくやったわたしにしても転校初日で屋上に来るとか予想外しかもテニス部目当てっぽいしここでお昼食べてること誰に聞いたんだろ……


しばらくして諦めたのか、最後にガンッと強くドアを一蹴りして声の主は去って行った。

〜*〜
仁王「……なんじゃあれ」
赤也「こえぇ〜」

仁王に赤也、丸井が嫌悪感を隠しもせずに感想を漏らした。


「ふむ。あれが幸村たちのクラスに転校してきた女子生徒か」

柳だけは納得したと頷いていたが。

ユキ「そうだよ、あれが転校生」
「はじめっからユキ狙いっぽかったけどさっきのを聞く限りテニス部全員が目当てっぽいね」
真田「あの紙は転校生用か?」
「そうだよーまさか初日に来るとは思わなかったけど」

いやー鍵掛といてよかったねほんと。

ふいぃ〜とかいてもいない汗をかく動きをしたあと、にっこりと笑った。

〜*〜

丸井「で、なんなんだよぃアイツ…」
「だから転校生だってば。たぶんこれから接触してくるよ」
柳「根拠は?」
「勘」

きっぱりと言い切ったルイに呆れの視線が集まるが、ルイ本人は真面目な顔を崩さなかった。

「いやな予感がしたんだよね。……転校生を見たとき」
ジャ「ルイの勘は当たるからなぁ」

柳「俺に書かせたのはなんでだ」

別にルイや精市が書いてもよかっただろう。

「万が一ってことがあるからね。筆跡を知られる可能性が低い柳に頼んだんだ」

弦は達筆過ぎそうだし丸井と切原は論外。柳は字がきれいだし

柳「なるほどな」

〜*〜

それで、あの張り紙はいつ剥がすんだよぃ?
当分貼りっぱなしだよ
は?


もともとここはテニス部専用みたいな扱いだったし花はユキが育ててたし、当番の子はファンクラブの子だから話せばわかってくれるし、先生たちにはあとで私とユキとあと柳で説明しに行くし大丈夫でしょ。いざとなったらおど…こほん、精市が説得してくれるでしょ。



これで今まで通りここでご飯食べられるよ。

あ、ここに来るまでに付きまとってくるだろう転校生は振り切ってきてね。連れてきたら許さないから。撒けなかったら転校生の相手しててね。



「………はい」



=(とりあえず)了=

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