翼の行方
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梨央たちは伏見奉行所まで辿り着いた。
この奉行所には長州との戦いに備えて、京都所司代の人々が集まっているようだ。
隊の先頭に立っていた近藤さんが、門のそばにいる役人に近づいた。
「会津中将松平容保様お預かり、新選組。京都守護職の要請により馳せ参じ申した!」
松平容保というのは会津藩と京都守護職の長、その両方を兼ねている人間らしい。
だが、その役人は新選組の名前を聞いても、いぶかるように眉を寄せるだけだった。
「要請だと……?そのような通達は届いておらん」
役人の言葉に、梨央はため息をついた。
《どう思う?彰良》
《さぁ、よっぽど混乱してんのとちゃうか?内輪の情報伝達も出来てへんとか…、意外と幕府が押されてんのかもな》
《…千鶴が来なくてよかった》
《確かになぁ。この調子じゃたらい回しになりそうやし…面倒やな》
今更ながらに、千鶴がこの場に居ないことに安堵する。
梨央と彰良が会話している内に、新選組は会津藩邸に向かうことになったらしい。
役人の様子を考えても、これから向かう場所が新選組を歓迎することはなさそうだ。