柳君とZzz

□秋雨前線
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この数日の雨は秋雨前線のせいなのだと隣3センチ斜め上から聞こえてくる。



秋雨前線


それは10分前。


もう梅雨なんて3ヶ月前に終わったのに。

いったいこれはどういうことなんだろう。


ちょっと勉強して帰ろうと思ったら空はどんどん暗くなって雨がざーざー降っていた。

「確かに最近雨多かったけど・・・」

「これはないよとお前は言う。」

「柳君。今帰り?」

後ろから来たのはこの学校で知らぬものはない。文武両道を絵に描いたような人物。


「あぁ、部活は終えても生徒会がな。草原は油断して傘を忘れた口か?」

傘を持たずにボーっとしてたからか柳君がきいてくる。

「そうなの。走って帰ろうかと思ってたとこ。」

少し悩んだかと思うと、バサッとこれまた有名な柳君の番傘が開く。


「入っていくか。」

私はその申し出に首を縦に振った。



そして秋雨前線という言葉を聴くにいたったのだ。

「久々に雨が続いたな。」

柳君の腕が近い。

雨の雫は狭い傘には余裕で入って白いシャツが透けて決して柳君の腕が細くはないということを見せ付ける。


「聞いているか?」

「ひあっゴメンあのっもうここで曲がんなきゃ!傘有難う。」

傘から出ようとするのだが柳君の手が私の手を捉えてそれを許さない。

「この傘は草原が持っていけ。」

「ダメだよ!柳君がぬれちゃうじゃん!」

「おれにはこれがある。」

そういって柳君はかばんから折り畳み傘を出す。

「では明日な。」


私は赤い光沢を出す番傘を手に

彼がその傘を出さなかった理由を考えた。


→あとがきとオマケ
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