柳君とZzz
□金夾
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昔は綺麗に切りそろえられた前髪の下に丁度覗いていた彼の切れ長な目を見るのが好きだった。
前を見据えたそれは今の私には見ることが出来ない。
金夾
彼の前髪はいつの間にかするすると伸びて。
後ろ髪のさっぱりさに比べてとても
「うっとおしい。うっとおしいわ。柳蓮二。」
私が眉をひそめて文句を言えば、蓮二は眉間に皺がよるぞといって私の眉の間をこつんと小突いた。
私はたとえ目をつぶっているように細い目でもまっすぐに物事を見る蓮二が好きだった。
「蓮二はそのかみ切らないの?私、前のほうが良かったわ。」
蓮二は少し詰まってさっきは自分でやめろといったのに私以上に蓮二は眉をひそめた。
「・・・・俺が陽の趣味に合わせる義理は無いな。」
そういって一向に切る様子はない。
明治の文豪の書いた小説を手に取ったところを見ると、もうこの話題について蓮二は私との話を切り上げる気でいるのだろう。
「・・・テニスにも邪魔になるだろうに。」
「・・・前髪以上にテニスに支障の出ることがあってな。」
そういって蓮二が前髪を掻き揚げると少しだけ覗いた長い睫毛に美しさを覚えた私はどうにか蓮二の髪を切れないものかと思案した。