柳君とZzz
□今宵月の下で
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ぽろぽろなんて可愛いもんじゃなく、
ぼろぼろと私の頬を流れていったのは
悔しさの一杯詰まった涙だった。
今宵月の下で
嗚咽が止まらない。
涙はもっと止まらない。
彼が私を放り投げたことも
まだ手をつなぐことしかしていないくらいに、浅い月日しか経っていないことも
何もかもが悔しくて
その上、頭上で光る三日月はそんな私にスポットライトを当てていて、
それがまた悔しくて。
こんな独り舞台早く閉じてしまいたかったから私はうずくまってしまった。
「何をしているんだ。陽。いくら初秋だといっても寝るには寒いぞ。」
不意に掴みあげられた腕に顔を上げれば
「蓮二・・・寝てはいないよ。」
あきれたように眉をひそめたご近所さんが立っていた。
蓮二はテイスティの缶コーヒーをカイロ代わりにと差し出して私はそれを受け取る。
「・・・座るか?」
長年の勘で分かるのだが多分、相当今の私の扱いに困っている。
そのやさしさがまた私の中の水分を目からこぼれさせる。
「・・・あまり泣くな。」
涙に邪魔されて声は出せなくて、必死で無理だと首を振った。
涙は、なおもこぼれ出る。
「泣かないでくれ。」
蓮二が私の頬の雫をとるけれどその指にまたぽたぽたと水滴が落ちる。
「その涙の分、お前があいつを大切に思っていたかと思うと俺は・・・」
違うよ、蓮二。
これは悔しいから泣いてるの。
そう言いたいのにやはり涙が邪魔をした。