向日葵の庭
□唇で殺せ!
1ページ/8ページ
…可愛い、とか、思っちまった。
【Side:S】
かったるい授業を終え、俺は部室へと走った。SHRはサボったから、一番乗り…に、なる筈だったのに。
「…天下の跡部様が?」
ソファに横になって寝息を立てている、跡部景吾の姿が在った。
言うのは二回目だけど、俺はSHRをサボった訳で…だから今此処で寝てるって事は、跡部も何かサボったって事で。
「顔綺麗だけど…やっぱ寝顔も綺麗だな、性格はアレだけど。」
跡部の寝顔なんて、そう拝めるモノじゃない。近付いて観察してみる。
「……。」
白い肌、色素の薄い髪、長い睫毛、少し開いた紅い唇…碧い目が見えないのは残念だけど。
「綺麗っつーか…可愛いな、跡部。」
何だか跡部の新たな一面を知った気がして、少し気分が良い。普段はあんなでも寝顔は可愛いなんて、あぁやっぱ子供なんだよな…とか思う。
「おい跡部、もうすぐ部活だぞ。」
肩に手を掛けて揺すってみても、眉を寄せるだけ。手強い。
「あーとーべー!」
「……ん、…」
さっきより大きな声で呼び強く揺すると、小さな声を洩らしてやっと碧い目が見えた。
「やっと起きたか、もう部活始ま「……宍戸、」
「え、」
―――ちゅ。
名前を呼ばれて、腕を軽く引かれて。
唇が、重なって。
「―――っ!?」
「ん……。」
腕を振り解き後ずさると、跡部はまたソファに倒れ込んで夢のの世界へと旅立った。