long novel

□君を呼ぶ声 第四話
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「中尉の部屋に仕掛けられていた爆弾の調査はどうなっている?」

「材料となったものは比較的簡単に手に入れられるものばかりでしたね。そちらの線から探るのは難しそうです」

「そうか…。いずれにせよ犯人はまた中尉を狙ってくるだろう。お前もハボックと彼女の身辺警護を頼む。不審人物がいたらすぐに知らせてくれ」

カツッと踵を鳴らして敬礼をするブレダに頷いて、壁にかけられた時計を確認すると、もうずいぶんと時間が経っている事に気づく。

「もう戻っていいぞ。私はこれから軍議に出る」

「それなら俺も行きますよ」

机から今日の軍議の要項について纏められたファイルを取り出し立ち上がると、ブレダが慌てて突き出た腹を無理矢理引っ込め、軍服の前を留めだした。
それを手で制して扉へと向かう。

「ついて来なくていい。お前も中尉の傍に居てやってくれ。しばらくは私に護衛は必要ない」

「……視察の時もですか?」

ボタンを留める手を止めて、眉を寄せたブレダが私の後に続く。

「そうだ。視察にも必要ない」

「承服しかねますね。あんたを放っておいたなんて記憶が戻った中尉に知られたら、俺ら射撃の的にされますよ」

「ははは。構わん」

長い廊下を並んで歩きながら、笑って言ってやると、隣を歩くブレダが心底いやそうな顔をした。

「俺らが的にされる前に、まず大佐が怒鳴られると思いますがね」

「はは、は……確かにな」

笑い声が、乾いたものへと変わっていく。


確かに、リザならまず私の無用心さに怒るだろう。

『何を考えているんですか、貴方は!ご自分の立場をわかっているのですか!?』

そう言って眉を吊り上げる彼女を容易に想像出来てしまう。

だが。
彼女にどれ程怒られようと、これだけは譲れない。


「とにかく、お前たちは中尉の警護を頼むよ。今は私より、彼女の方が危険なのは、わかっているだろう」

「そりゃそうですが………」

まだ食い下がろうとしたブレダは、けれど私に聞き入れる意思がない事を読み取って、深いため息をついた。

「わかりましたよ。ですが、視察の時はせめて、フュリーかファルマンを連れてって下さいよ。あんたに何かあって中尉に射殺されるなんて俺はいやですからね」

その譲歩にも顔をしかめて見せたが、今度こそブレダも譲る気はないようだった。

「わかったよ。まったく、私はそんなに信用ないのかね」

仕方なく、といった風に肩を竦めると

「中尉に倣ったんですよ」

カラカラと笑われた。
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