long novel
□孤悲に溺れる夜 四話
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「おお!すごいじゃないか!」
落胆を悟られまいとことさら大きな声で言って拍手をすると、はにかむような笑顔でリザが振り返った。
「次は貴方が賭けてみて?まずは色からね」
嬉しそうにカラーチップを差し出す彼女。その隣に座って迷わずに赤に賭ける。
私の”焔”
彼女と私を繋ぐ絆の色。
「赤が好きなの?」
「ああ。俺にとっては大切なものの色だから」
「そう…」
微かに揺れる彼女の瞳。
なぜそんな顔をする?
私にとっては大切な絆の色。
でも、それは君にとっては哀しい色なのか。
当たり前か。
これは、君の信頼を裏切った色なのだから。
それでも。
私には、これしかない。
君と私を繋ぐものは。
「…では、好きな数字は?」
「数字?そうだな…」
こちらを見つめる彼女を眺めた。
決まってる、そんなのは。
リザ・ホーク−−−。
「”1”」
「貴方も、1?」
驚いたように首を傾げるリザ。
だって。
君の名から連想できる数字はそれしかないじゃないか。
そうは思っても口には出来ないから。
別の理由を言ってみる。
「俺は”一番”が好きだからね」
ウィンクを一つ。
彼女はキョトンと見返して、それから笑った。
「本当に、子供みたいななんだから」
くすくすと肩を震わせて笑う彼女を見て。
たった今ついた嘘を”1”が好きな理由に加えようと思った。
こんなに可愛い彼女が見れたのだから。
それから、二人でチップを賭けまくる。
どちらが儲けるか。
なんて競争をしながら。
彼女が”8”に賭ければ
「馬鹿だな。それは振られる数字だぞ」
なんて忠告をしてやる。
睨まれてしまったが。
案の定、ボールは隣の7に落ちたものだから大笑いした。
彼女は諌めるように睨んできたが、だめだよ、目が笑っているじゃないか。
おまけに
「9にも落ちてくれなかったわね」
なんて言うからもう一度笑ってしまった。
「くっくっくっ。あいつ今頃くしゃみしてるかもしれないな」
「もう!ひどい人ね!」
ポカリと胸を叩かれてしまった。
そうやって、どれくらい遊んだのか。
数百万センズ分を使い果たしてさらに同額をチップに変えようとした時、背後から声をかけられた。
ディーラーの背後にいたピットボスだ。
どうやらようやくハイローラーに認められたようだった。