遊戯王GX長編小説 第三期
□1章 休日の一時
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日光が眩しく感じる昼近く、刑雄はアカデミアの屋上の端の方に腰かけ、缶コーヒーを飲んでいた。
ブルー寮の自室でゆっくりデッキ構築を考えたかったのだが、そういうわけにはいかなかった。
十代が破滅の光に乗っ取られた斎王を倒し、宇宙の危機を乗り越えてから数週間経つ。
兄の壮牙はこの間タイトルマッチで、世界トップの座であるチャンピオンになった。
それは連日大きく取り上げられ今でもその影響は引きずられている。
そして、光の結社に所属していた生徒は元通りになっていた。
となると、彼らは一つやらねばならぬ事があった。
男子ブルー寮をホワイト寮として使ったため、壁や屋根の色は全て白。
そのため光の結社に所属していた面々はブルー寮を前の色に染め直さなければならなかった。
朝から染め直しの作業が始まり、自室に居ても騒がしくてたまらない。
現場の声と作業の音、耳障りな指揮官万丈目の声に集中力が乱され苛立ちを覚え始めたところでブルー寮を出て屋上に来たというわけだ。
アカデミアは新学期に入る直前のため休日となっており人は少ない。
自分の集中を乱すものは無くゆっくりとデッキ構築をやり直していた。
壮牙に敗れ、明日香に励まされ新たに決意を固めた刑雄はまずデッキ構築を一からやり直していた。
明日香に励まされて、前を向き進むために概念を一回外し何がベストか改めて考え直した。
前に進み目的を達成させるために。
そうやってゆっくりと考えていたのだが、聞き飽きる程聞いた声がした。
十代「本当にこの一年色々あったよな!…そうだよな!あの時は大変だったな」
世界を救った影の英雄、遊城十代。
結局彼が世界を救ったのを知っているのはごくわずかでろくに祝福はされず仕舞いだったが、本人は全然気にしていなかった。
新たな仲間"ネオスペーシアン"を引き連れて一年間の思い出を話しているようだ。
それを見て何かを思い付いた。
将軍『何を考えているかわかりますよ』
刑雄「デッキ構築は考えているがデッキは崩してないからな」
立ち上がり、こちらに気づいていない十代の元へ向かう。
十代の周りに浮遊している新しい仲間達がそれに気づき刑雄達を見る。
同じ精霊同士なのか"メフィスト"の事はそこまで警戒はしていないようだ。
刑雄「その新しい仲間達にまだ挨拶をしていなくてな…」
デッキをセットしデュエルディスクを起動させ、デュエル挑戦の意思表示をした。
十代が帰ってきてから一度も対戦していなかった。
それだけに刑雄にとっては興味深い。
十代「確かに挨拶は大切だからな」
わかっているらしく笑顔を見せ、同じくデュエルディスクを起動させ、距離を取る。
それと同時に精霊達はカードへと戻った。
言葉は少なくとも通じるものがある。
刑雄「行くぞ十代!」
十代「おう!」
「「デュエル!!」」