ヴァンガード短編
□まさかの提案
1ページ/1ページ
今、トシキに手を握られながらカードキャピタルもとい私の家に帰ってきた。
ゲスに絡まれた時はただイラッとしただけだったけど、両腕を捕まれて連れて行かれそうになった時は正直怖かった。
だから…トシキがきてくれて嬉しかった。
ただ、あの時のトシキはいつもと違った。
かなり怒ってた。
いつも周りとは一線をひいて厳しい言葉をかけて不機嫌そうにしてるけど…さっきは本気であのゲス共を敵視していたように思えた。
あんな姿は見たことなかったから、余計に嬉しかったよ…。
でも、ここに来るまで一切喋ってない。
黙って優しく手を握り歩くスピードを私に合わせてくれていた。
気を使ってくれているんだとしたら素直に嬉しい。
けど今までを考えると異性に興味を示しているか分からない
前に合宿した時水着なったのに、カエサルの光定とずっとファイトして見向きもしてくれなかった。
期待できないな…。
こんな意識してるって事は私…トシキの事が好きなんだ…。
なんでトシキの事を好きになったんだろう…。
そんな事を考えながら私は部屋にいる。
トシキに。
「部屋にいって静かに待ってろ」
と言われ言った通りにしている。
トシキは店にそのまま入って言ってシンさんに話かけてた。多分さっき何があったか話すんだろうな。
別にそこまでしなくてもいいのに…
やっぱりトシキは優しい。
数分したらドアがノックされた。
「俺だ…少し話がしたい。入ってもいいか?」
「いいよ…」
まさかこんな形で男子を部屋に入れるなんて思ってもみなかった。
部屋にトシキが入ってきた。
ドアのすぐ隣の壁に腕組みをして寄り掛かった。
「お前は帰路につく時、誰かと一緒じゃないのか?」
帰路って…ちょっと堅苦しい。
「みんな部活やってるから一緒に帰るなんて事は滅多にないよ…私はバイトがあるから部活するつもりないし…」
「そうか……つまり帰りはいつも1人か…」
なんか悩み始めた。
そしてなにか思い付いたようだ。
「……お前が良ければ…今度から学校が終わったら俺と一緒に帰らないか?」
……………………えっ!?
何言ってんの!?
一緒!?櫂トシキと一緒に帰る!?やっぱり二人っきりで!?
やばい…顔が暑い。
「嫌なら強制は…」
「……じゃ…い…」
「……よく聞こえなかった。もう1回言ってくれ」
よく聞こえたね…聞こえないようにわざと小さな声で言ったのに。
「……嫌な訳ないじゃない…って言ったの!!嫌じゃない!むしろ嬉しい!!こんなに心配してもらった挙げ句に一緒に帰ってくれるなんて!高校で友達と一緒に家に帰った経験がほとんどない私にとって、一緒に帰ってくれるなんて嬉しい事なんだよ!!」
勢いに任せて言っちゃったけど…引いてないよね…。
「そうか、ならいい」
普通の反応でよかった。
でも気になる事がある。
「……一つだけ聞きたい事があるんだけど…」
ちょっと勇気が必要だけど、告白とかに比べたらマシ。
「なんだ?」
「ここまで私を心配してくれるのは…なんで?」
「……まあ普通なら気になるだろうな。いつも他人とはほとんど交流しない男が急にここまで心配して、しかも一緒に帰るなんて言い出せばな…」
若干笑いなが言ってきた。
トシキはこの状況を楽しんでる?それとも皮肉?
「……明日帰る時に教える。今日の所はゆっくり休め、明日学校が終わったら校門で待ってる。お前の方が早かったら大人しく待ってろ」
そう言って行ってしまった。
……やばっ…今から緊張してきた。
だって好きな人と明日から一緒に帰れる…私、幸せ過ぎるね。
思えばトシキは私の学校がどこにあるのか分かっているのかな?
あの口ぶりだと分かってるようだけど…
明日はちょっと気合いを入れてみるかな。