ヴァンガード短編

□ファイト
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あの後ーと言っても昨日だがー結局、カムイ君とファイトした。

しろしろってうるさかったし……そういえば、始める頃にシンさんが帰ってきて事情を話したら、店長代理に店番任せて見学してたな。

ファイト内容は私のツクヨミのスペリオルライドとアマテラスのスキルが決まり圧倒的な差を付けて勝った。

流石に強かった、小学生とは思えない強さだけど何度も見てれば戦術がまるわかり。

カムイ君はすごく悔しがっていてそれをアイチが慰めてたな。

その後、何度もデッキを見直して今思う最高の仕上がりにした。



そして今、つまり今日。

学校が終わり帰宅中、なぜか緊張する。

こんな気持ちでカードキャピタルもとい、家に帰るのは勿論初めて。


そんな事を考えてたらカードキャピタルの手前まで来ていた。

とりあえず裏から家に入ってデッキを持ってくるとしよう。


お父さんとお母さんがくれた宝箱の中に私はいつもデッキをしまっている。

思い出が詰まった私にとって本当の宝箱に―


デッキを取り出し、デッキケースにいれ着替えて店に向かった。


ドアを開けて見渡すとまだトシキは居なく、いるのはシンさんと店長代理だけだった。


「お帰りなさいミサキ、櫂君なら見ての通りまだ来ていないよ」


これからトシキが来ると思うとまた一段と緊張が高まってきた…。


「青春ですねぇ〜、ミサキも高校生ですからお年頃なんですね」

「ば、馬鹿な事は寝言でいいな!」


ニヤニヤしながら何が"お年頃"よ!

べつに私にはそんな事どうでもいいんだから!


とりあえずテーブルに座ってデッキを見つめながら待とうと椅子に座った瞬間、店のドアが開いて誰かが入って来た。

トシキだ。

その後ろには三和やアイチ、カムイ君、アイチの同級生森川、井崎、がいた。

昨日みんなの目の前でファイトを挑まれたから、注目が集まっているのは当たり前か。

後者2人はどうせアイチから聞いたのだろう。


そしてトシキは私の所まで来た。


「準備が出来てるなら、始めるぞ」

「わ、わかった」

「それなら2人共、CFステージ2(仮)を使って下さい。その方が皆さん見易いですから」


シンさん、明らかに店番を店長代理に任せる気だ…。


断る理由もないから了承してデッキを取り出す。

トシキも同じようにデッキを取り出しセッティングを始めた。


互いにファイトの準備が整った。


「いくぞ」

了承の意味で頷く。


「「スタンドアップ!!!(THE)ヴァンガード!!!」」


……数ターン後、ダメージはトシキが4で私が5。


私のヴァンガードは【CEO アマテラス】、トシキのヴァンガードは今まで使ったことがない【封龍 ブロケード】 。


ブロケードのスキルで私はインターセプトを封じられている。


ツインドライブで2枚さらにアマテラスのスキルで5枚ドローして、私の今の手札は7枚だけど、私の後の攻撃は防がれてしまったから今度はトシキのターン。



「……ファイナルターン!」


いつものように高らかに宣言する。



「ドロー、コールTHEリアガード!【ドラゴニック・オーバーロード】!!!」


出てしまった…数々のファイターを沈めてきたトシキの切り札…

今回はリアガードとして登場したが厄介なことに変わりない。


トシキのフィールドはヴァンガードにブロケード、前列のリアガードは今コールされたオーバーロードとドラゴンナイト ネハーレン。



後列は、ネハーレンの後ろに鎧の化身 バー、ブロケードの後ろに希望の火 エルモ、そしてオーバーロードの後ろにアイアンテイル・ドラゴン。

そして手札は3枚。


「……オーバーロードのカウンターブラスト、これによりオーバーロードのパワーはプラス5000」


素でパワーが16000になってしまった…

しかもブーストするリアガードがまた厄介なユニットだった。


「アイアンテイル・ドラゴンのカウンターブラスト!」


このユニットは元はパワー7000だがカウンターブラストによりダメージを1枚裏返すことでパワーを1000プラスする。


トシキはそれを2回発動した。

つまりパワーは2000上がって9000…


「アイアンテイルでブーストしたオーバーロードで、アマテラスに攻撃!」


パワーは合計25000


アマテラスは10000。

ヴァンガードのルールではパワーが同じでもダメージを受ける。つまり相手のパワーを上回らなければ攻撃を防げない。


あと1ダメージで負ける以上、この7枚の手札でなんとか阻止するしかない。


「オラクルガーディアン ニケとドリーム・イーター2枚でガード!」


シールド10000と5000を2枚、合計3枚も使ってしまったがアマテラスのパワーは30000となりオーバーロードの攻撃は通らない。


「エルモのブースト、ブロケードでアマテラスを攻撃!」


「バトルシスター しょこらでガード!……手札をオラクルシンクタンクをドロップすることで、この攻撃ではヒットされない!」


わかりやすく言えばダメージを受けないということだ。


この時点で手札は残り2枚、シールド5000のオラクルガーディアン ジェミニが2枚。


このトシキのドライブチェックでトリガーが出なければ、ネハーレンの攻撃を耐えれる。


「ツインドライブ…ファーストチェック」


めくられたカードはネハーレン、トリガーじゃない……けど、もう1度のドライブチェックが残っている。


「セカンドチェック」


めくられた2枚目は……


「ゲット!クリティカルトリガー!」


一番きてほしくないトリガーがきてしまった…


「能力は全てネハーレンへ…」


これでネハーレンはパワー15000となりネハーレンの攻撃によって受けるダメージは1つ増えた。


「バーのブースト、ネハーレンでアマテラスを攻撃!」


シールド5000が2枚じゃガードしても20000が限度…バーのブーストでネハーレンは23000となっている。


「ノー…ガード…」

防ぎようがない…


ダメージが5の状態でのクリティカルトリガーを乗り切る方法は1つ…デッキに4枚しか入っていないヒールトリガーを2回連続で引かなくてはならない。

かなり確率は低いが、それが助かる唯一の方法。


「ダメージトリガーチェック…」


1枚目をめくると、ヒールトリガーである【ロゼンジ・メイガス】だった。

回復はするがダメージは変わらず5のまま、パワーはアマテラスへ。

それを見てもトシキは特に驚きもしていない。


「もう1枚、ダメージトリガーチェック…!」


ゆっくりとカードをめくる…

ついつい笑ってしまった。

こういうのって初めてだから凄く嬉しい―


「ヒールトリガー!」


「……!」


見ていた一同が目を見開き、口が半開きになってしまった。

直後―


「「「凄い!!!」」」


店内が一斉に沸いた。


このターンを乗り切った。


この状況を乗り切ったのはとても嬉しい。

アイチがふっと呟いた。


「櫂君のファイナルターン宣言が覆された…」

「俺も初めて見たぜ……櫂もショックなんじゃないか?」

「……黙れ」


ニヤニヤしながら聞いてきた三和の質問にイラッとしたのか眉間にシワを寄せ一言だけ呟いた。

そんなトシキの姿が可愛く思える。

これはやばい感情だよね…


この頃なぜか知らないけどトシキに対して変な感情が湧いてくる。

何故かはわかるようなわからないような……今は曖昧だけどそのうちはっきりとわかる気がする。




……ファイトの結果は、トシキをダメージ5まで追い詰めたもののそこから攻めきれなくて負けた…悔しい…でも楽しかった。

ファイトが終わったから互いにデッキを片付ける。


「……戸倉」

「ん?」

「……お前からは得る物があった、感謝する」


一気に顔が紅くなっていくのが自分でもわかる。

は、恥ずかしい…。


「こ、こっちだって今回のファイトは勉強になったし…あんたとファイトできてよかった」


相変わらず顔が紅い。


「……また明日くる…」


それだけいって満足げな表情を浮かべ店からでていった。

その後を三和が急いで追っていく。

また明日くるって、今まで一度も宣言したことないのに……なんだかまた期待しちゃうじゃないか。


「櫂君も素直じゃないなぁ…」

「は?」

「な、なんでもないです、アハハ…」


アイチの言葉が気になるが今は満足感で満たされているから、真意を聞かなくてもいいとしよう。

……さて店番に戻ろうかな。

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