ヴァンガード短編

□櫂トシキのご指名
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現在カードキャピタルではお客の学生達が喧しいくらい元気にファイトを繰り広げている。

だけどそんな事はお構いなしに静かにカウンターで読者をしているのが私、アルバイト店員の戸倉ミサキ。

自分で静かにしているとかいうのはどうかと思うが、いつものことなので気にしない。



確かに耳に入ってくる雑音は耳障りだが、騒いでいるのはチームQ4に関係するメンバーだし別にいいかなとも思う。




そしてもう1人、片隅で静かにデッキを調整し、その場を過ごす人物がいる。


櫂トシキ…誰が呼んだか―

"孤高のヴァンガードファイター"(※呼びません)


ついでに私はトシキと呼んでいる…心の中で…。

だって実際に言うなんて恥ずかしいだろ…。

名前の方が呼んでいて落ち着くからってのが主な理由…他にも色々理由はあるけどこれは秘密。


説明を続けると―

そこらのファイターとは全く違う気質を持った男。

ファイトではいつも冷静冷酷に相手を粉砕する。


ファイト以外では一言で言うと"一匹狼"。

必要以上には言葉を交わさず、関係を持たない。

そして"甘え"というものも全く持ち合わせていないようだ。

以前、私が過去に悩んでファイト出来なくなっていた時、こう言っていたらしい。


"過去を弱さにするのはただの甘えだ"


なんともあいつらしい言葉で最初聞いた時は正直凹んだ、でも悔しいくらいその意見が正しかった。


「おい櫂!俺とファイトしろ!!!」



また始まった―

飽きないものね―

カードキャピタルの中でも一、二番目にうるさい男子がトシキにいきなり挑戦状をたたき付けた。


葛木カムイ、小学生ながらヴァンガードの実力はかなりで私、トシキ、アイチと共にカードキャピタルの代表メンバーに選ばれる程である。

そして、カムイの隣であたふたしているのが先導アイチ。

ついでにカムイ君は過去に2回トシキにファイトで負けている。しかも1戦目終了後に"闘う価値はない"と言われ、ショップ大会決勝で再戦した時はトシキが、自分とファイトしたことがない価値ある奴とファイトしたかったとまで言われた。

トシキに言わせると、ファイトする意味のない相手。


「断る」

「なに!?」


やはり断られた。全国大会が終わって、トシキがくる度に再戦しろと言っているんだけど、いつも断られている。トシキが少し大人気ないような気もする。

私としてはうるさいが少し面白い光景で、ちょっとした楽しみになっている。

そして、断られて怒っているカムイ君を宥めるのが先導アイチの役割となっている。


「少しは学習しろ…」

「俺とファイトしろ!!」

「何度も言わせるな、俺は得る物がない相手とはファイトはしない」


それだけ言うとデッキ調整に戻った。

相変わらず面白い―


数分後、トシキの唯一の友人、三和タイシが入ってきた。


「よぉみんな!!元気にしてるか?」


相変わらずの明るさ―若干ウザいけど。

「いいとこに来た!聞いてくれよ!」


カムイ君が三和にさっきの事を愚痴ってる―またなんか始まる予感。


「なぁ櫂、お前ファイトしたいやつはいないのか?」


「……1人いる」


えっ…いるの?


「誰だ!!この俺様を差し置いてお前がファイトしたい奴は!俺がそいつを負かしてやる!!さぁ言え!」

どうせアイチだろう―あいつも成長したし、そろそろファイトしてもいいと思う。



「……戸倉、こいつの相手をしろ」

「はぁ?なんであたしが!?」


店番してるのになに言ってんだ!しかもデッキ片付けて玄関に向かってくるし。


「そうだ!俺はお前のファイトしたい奴とファイトするんだ!!なんでミサキさんなんだ!」

「お前が言ったんだろ…俺がファイトしたい奴とファイトすると……」


今の言い方だと…まさか―


「まさか櫂君がファイトしたいのって…ミサキさん!?」

「あぁ…」


な、なんで!?


トシキは私の目の前で一旦立ち止まった…やばっ、なんか緊張する。


「俺は今日はこれから用事がある、明日またここにくる。それまでにデッキをベストな状態にしておけ…」


そう言って出ていった。三和も急いで後を追っていった。


あたしは……立って動けない上に言葉がでない。

謎しか残らない…

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