遊戯王GX長編小説 第二期

□7話 HERO激突
1ページ/2ページ





まだ周りが霧に包まれた早朝ー―校舎の入口前には看板の指示通り集まったメンバーがいた。

その一人の彩斗の左腕にはアカデミアから支給されているデュエルディスクが装着されている。


彩斗「早く終わらせよう…眠いし…」


昨日騒ぎ過ぎたためか彩斗は若干眠そうだった。

緊張感がまるでない。


来栖「頼むぞ彩斗。レッド寮の存続を賭けたデュエルだから負けらんないからな」

彩斗「流石にレッド潰れんのはまずいからな。勝って…寝る!凜も一緒に寝るか?」

凜「うん!一緒に寝る!」


この二人は相変わらずブレる事なく自分達だけの世界に入っていく。

そんな雑談をしているとアカデミアから出てきた二つの人影。

クロノス臨時校長とナポレオン教頭だ。


ナポレオン「本当にくるとは…」

彩斗「さっさとやろうぜナポレオン教頭。対戦相手だってもう誰だかわかってるし、今更逃げも隠れもしない。あんたらが選んだ刺客を真っ向から粉砕してやるよ」

エド「随分な自信だな」


教師二人の後ろから現れたのはエド、彩斗の情報通りの相手に緊張感が辺りを包む。


彩斗「やっぱりお前か…エド・フェニックス」

エド「……片桐彩斗か…一応お前たち全員の顔と名前は聞いている」

彩斗「対戦相手を調べるのは感心だが、後輩の態度としては感心しないな」

エド「これは失礼しました。では先輩の顔を立てて手加減してあげましょうか?」

彩斗「ほぉ…言ってくれるじゃねえか…そう言っとけば負けた時に言い訳できるもんな?」

エド「まあ貴方の実力では手加減しても勝ってしまうかもしれませんね…」

彩斗「なんだとコラ!」

来栖「煽り耐性ないなお前!?」

凜「彩斗、手出したら駄目だよ!」


エドに掴みかかりそうになった彩斗を来栖と凜がなだめ、戦いの場である学園のデュエル場に移動した。

デュエルフィールドの両端に分かれデュエルディスクにデッキをセットし起動させる。


彩斗(エドから放たれてるプレッシャー…刑雄と同格だな)


彩斗がプロデュエリストと対戦するのは初めてだ。

そして初めてプロの凄みを肌に感じていた。

今まで彩斗が感じた最大のプレッシャーは同率などなく刑雄が発したものだけだったが、今この瞬間それと並ぶ者が現れた。


彩斗(やっぱり俺もデュエル好きだわ…このプレッシャー、テンション上がるZE☆!!)


最高のプレッシャーは感じるのだが、それは彩斗に恐怖や焦りではなく喜びを与えた。

一段とテンションが上がりやる気が出てきた彩斗からもプレッシャーが放たれていた。

なんとも言えない緊張感が辺りを包み、嵐の前の静けさなのか辺りは静寂していた。

だがしかし、その雰囲気を壊す者が現れた。


十代「そのデュエルちょっと待った!!」


突然の十代の声に驚き、聞こえてきた入口を見ると、ここ数日行方不明になっていた十代が走って会場に入って来ていた。

服は多少傷ついているが、表情は元に戻り明るさを取り戻していた。


彩斗「どうやらお前とはまだ縁があったらしいな」

十代「そうみたいだな」


他のメンバーが驚いている中、彩斗は特に驚きもせずに話していた。

多少冷静さを取り戻したメンバーは十代の元へと駆け寄っていった。


刑雄「よく生きてたな」

十代「まぁな!何たって凄い事があったからな!ボートで海に出たら新しいHEROデッキに出会ってさ!」


そこから十代の話によれば、新しいHEROは宇宙からきたらしく元々地球上にはいなかった。

島に戻ってきたらそのHERO達が至る所で自分を呼ぶから、一つずつ探しに行ったらこんなに時間がかかってしまった。

そして再びカードが見えるようになった。


彩斗「なるほど宇宙からねぇ…十代、お前疲れてるみたいだから一回保健室で寝てきた方がいいぞ」

十代「明らかに疑ってるだろ!?本当に宇宙から来たんだって!」

刑雄「カードが見えるようになったのに宇宙がどうたらと…」


流石に、宇宙からカードが来たと急に言われても信用しろと言う方が無茶だ。

精霊の力を熟知している刑雄ですら疑っているが、十代が嘘をつける人間でないことを知っているから複雑ではあった。


十代「とりあえずそんな細かい事は後だ!俺決めてたんだ。エド、お前にこの新しいHEROデッキを最初に見てもらおうって」

エド「"D-HERO"を超えるHEROなどこの地球上には存在しない」

十代「だから宇宙から来たんだって!というわけで彩斗、俺とチェンジだ」

彩斗「は?いやだし」


この空気なら誰しも代わってくれると思っていたが彩斗は違っていた。


彩斗「これで負けたらレッド寮は潰れるんだぞ。そんな宇宙から来た奴を信用できるか。しかも昨日からやる気出てたんだ!絶対に変わらん!」

十代「いやそこをなんとか」


それからどっちがエドとデュエルするかで互いに譲ることなく、10分以上言い合いをした結果―。


刑雄「さっさとじゃんけんで決めろ」


自分がデュエルできないため多少不機嫌であった刑雄に、軽く頭を殴られじゃんけんで決める事になった。

ずっと待たされていたエドも多少イライラしていたが今のでちょっとスッキリした。

そしてじゃんけんの結果十代が勝ち、まさかの交換となった。


彩斗「はぁ…もうやだ…今日は絶対に部屋から出ない…学校サボる…」

凜「ドンマイだよ彩斗!後でまたお菓子作ってあげるから元気出して。ね?」

彩斗「おう!元気出す!」


根こそぎやる気を持って行かれた彩斗だったが、凜の慰めによりいつもの彩斗に戻った。

かなり単純である。

一方の十代はワクワクとした、まるで好奇心旺盛な子供のような表情を浮かべていた。


彩斗「十代!負けたら火山に突き落としてやるから覚悟してろよ…ニヤリッ」

来栖「自分で笑顔作ってニヤリッとか言うなよ…。まぁお前なら本当にやりかねないから怖いけどな」


彩斗の不敵な笑いで十代は一瞬冷や汗をかいたが、気を取り直して改めてエドに向かい合う。


刑雄「十代の新しいデッキ…興味深い」

火織「両雄再びって感じでワクワクしてきた!」

三沢「宇宙か…このデュエルで十代の言ってた意味がわかるといいが」

彩斗「どうせわかるわけねぇよ!」


そんな中ようやくデュエルが始まった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ