ゲーム

□花、開く季節に
1ページ/2ページ

「う〜っ、さぶっ」

ブルブルと震えながら、自室を出て来たのは、赤い髪のロイだった。

「4月とは言え、やっぱ朝は寒いよなぁ」

まだ来たばかりのこの土地自体、あまり慣れていないと言うのに。

つい先月、このスマブラの世界から、お達しが来たのは記憶に新しい。

ロイ、そしてもう一人。

「マルス」

自室から階段に差し掛かるところで、見覚えのある青髪を見つけた。

「おはよう、ロイ」

変わらずの笑顔を向けられ、ドキリとする。

ーーーって、なんだ?ドキって…。最近変だぞ?

ここのところ何故か、彼を見ると鼓動が早くなる。

風邪かと思って、ドクターマリオに診てもらったこともあるが、何でもなかった。

それどころか、ニヤニヤされながら、『ついにロイ君にも春がきたか』などと言われる始末だ。

「ロイ?」

ずっと黙ったまま下を向いていたロイを、心配そうに覗き込む。

「大丈夫かい?もしかして、具合悪いの?」

言いながら、マルスは自分の額をロイの額に当てる。

瞬間、ロイの鼓動が激しく鳴った。

「ーーーっ、だ、大丈夫!まだ眠いだけだから!あ、オレ顔洗ってくる!」

「あ、ロイ…!」

マルスの制止も聞こえず、

「本当に大丈夫かな…」

「マルス?どうしたんだ?」

背後から声がして、振り向いたのは、綺麗な金髪の青年だった。

「リンク」

「何か今、ロイの声がしたみたいだけど…」

ちらっ、と見つめてくる彼の碧眼に胸が鳴った。

自分よりも、深くて鮮やかなくらいの瞳。

「…マルス?」

「う、ううん。何でも無い…」

ほんのり顔を赤らめて、目線を逸らす。

「どうしたんだ?」

ーーーこの間から変だな…、リンク見てドキドキするなんて…

「おーい、マルスー?」

ひょこっと、顔を覗き込む。

「!!」

「……?」

「わ、私も顔を洗ってこようかなっ」

慌てて、その場から颯爽と逃げ去った。

「…なんだ?」




まだ、蕾の彼らの花は、春の訪れとともに咲開く。

その花に気づいて、彼らはきっと悩むだろう。

『その花に、何と名付けようか』、と。




→あとがき
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ