long...long....
□カツユ
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ざー
6月の雨は重い。分厚い雲が空を埋め尽くして世界を闇に包み込む、気を抜けば一体何時朝がくるかも分からない。
叩きつける雨はビニール傘くらいならば容易に貫通してしまいそうな威力で、こんなに降られては6月の花の紫陽花も俯いてしまう。
6限目が終わり、各々散らばっていくクラスメイトに混じって教室を出る。
本来ならば本日は割り当てられた校舎周りの掃除があったのだが、こう雨が降られてしまえば掃除するものも全て流されてしまう。
「宮原またな」
「おう」
ぽんと背中を叩かれて駆けていく友人はこの雨の中、愛しの彼女とデートらしい。
なんでも映画を見に行くとかで、朝から浮き足立つ友人を制するのが手間だった。
好きな人と想いが繋がって、一緒にいれる空間はきっと温かくて幸せなものなのだろう。
健全な男子高校生が集まれば大抵は、どの子が可愛いだとか告白したされたなんて女子がする会話と然程かわらない。
お前も早く彼女つくれ。なんて高みの見物をしていた、友人は先月愛する彼女に「つまらない」と死刑宣告を受けて振られた。
その時の落ち込みようといったら…まぁ、ざまぁみろだ。
別に俺だって好きな人が居ない訳じゃない、唯、少しだけ特殊なだけ。
一人、一人、また一人と人がいなくなる校舎。
運動部はこの雨で練習は中止を余儀なくされて、喜んでいた奴もいるが今週末に大会を控えた部は躍起になっていた。
どうやら吹奏楽部も本日は練習がなかったようで、廊下はしんと静かで歩く足音さえ拾って反響する。
コツリ、コツリ。と足音を紡ぎ、北校舎へと足を向ける。生徒のクラスが並ぶ東校舎より渡り廊下で結ばれたそこは特別教室なるものが連なる場所。
音楽室、図書館、美術室、職員室、そして一番端の端、皆が忘れてしまいそうな所にぽつりとある理科実験室。
理科部でなければ特別科学に興味があるわけでもない。毎日毎日呼ばれもいないのに勝手に向かう俺は唯の暇人。