「ナメクジになりたい」そう呟いたら、「どうして?」なんて知らぬ顔をして先生は俺の頭を撫でた。くしゃりと小さな子供にするみたいに優しくて、本当は弾いてしまいたいのに心地よくて堪らなく泣きそうになる。どうして俺がナメクジになりたいなんて突拍子もない事を言うのか、知っている癖に知らぬふりをする。それが先生がくれる優しさなんだろう、ならばその似合いもしない白衣に付ける染みもみないふりをしていて……彼は来月、結婚します。