短編

花魁情緒粉砕事件
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吉原での一悶着から数ヶ月経ち、元の姿を取り戻しつつある、ある日だった。


僕ら万事屋3人は日輪さんから依頼を受け、吉原に来ていた。


「ふ〜。新八、こっち終わったアル」
「僕の方も終わったよ」
「銀ちゃん戻って来ないからまだ終わってないアルか?」
「銀さんは僕らとは違う依頼だしね。先に日輪さんのとこ戻ってようか」
「うん。あ〜腹減ったアル〜」


依頼の仕事を終えた僕と神楽ちゃんは先に日輪さん達のお店へ戻った。


「あっ!新八達帰ってきた!」
「ただいま晴太君」
「ただいまヨ〜晴太」
「おかえり!母ちゃん、2人が帰ってきたよ」
「おかえり。や〜悪かったね〜力仕事頼んじゃって」
「いえいえ。仕事なさすぎて困ってましたし。はは」


乾いた笑い声を発すると、タイミング良く神楽ちゃんのお腹が鳴った。


「腹減ったネ」
「ご飯なら作ってあるよ。食べて行って」
「すみません、ありがとうございます」
「やったアル〜!」


神楽ちゃんは素早く靴を脱ぎ、バタバタと店の奥へ入って行った。


「新八も食べるだろっ?」
「ああ、うん。ありが、」
「新八くーん」
「へ?」


甲高い声の方を振り向くと、遊女さん達が店の奥からひょっこり顔を出していた。


「はい?」
「ちょっと来て来て!」
「え、僕ですか?」
「そうよ!早く早く」
「……エロい事すんなよ童貞」
「するかァァ!っていうか晴太君いくつ!?」


晴太君が神楽ちゃんの後を追って店の奥へ消えてから、僕は遊女さん達が居る違う部屋へ向かった。


「失礼しま〜す…」
「あ!新八君来た〜!」
「何かご用ですか?」


部屋には身軽な着物を来た遊女さん達4人が居た。

心なしかキラキラと瞳が輝いている。


僕はパタンと襖を閉め、部屋に入った。


「ちょっとおいでおいで」
「はあ……うわあっ!」


少し近付くとグイッと顔を引っ張られ、物凄く近くで4人にジロジロと見られた。


「やっぱ綺麗な顔してるわ」
「目はぱっちりで色白、肌はつやつや。髪はさらさらの黒髪ね〜」
「ほんと…。さすが頭は見る目が違うわ〜」
「なな、なんですか?月詠さんが何か言ってたんですか?」


綺麗なお姉さん達にたじたじになっていると、1人のお姉さんが綺麗な着物を僕の前に掲げた。


「頭がね〜この着物新八君に似合うんじゃないかって」
「はい!?」
「私達は神楽ちゃんの方が似合うかと思ったけど、新八君ってよくよく見たら女顔だし可愛いから似合うわよ〜」
「いやいや!その着物女物ですよ!?」


押し付けられた着物は真っ赤な椿の柄だった。

ご丁寧に髪飾りやら帯やらまで渡された。


「これ着て銀さんをより一層惚れさせちゃいなさいよ!」
「え゛っ…!!なんで知って…」
「そりゃ私達も良い歳だし、こんな仕事してるとそういうのも空気で分かるのよ」
「なっ…!!」
「まあそれはさておきお着替えの時間で〜す!!」
「ぎゃああああ!!」









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