短編

□白黒な優しさ違い
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「はあ〜」


何気なく2人用の広い部屋を見渡すと、銀さんが居なくなったせいか、より広く見えた。


すると、またコンコンとドアが叩かれる音がした。


「はい〜?」
「今平気ですかィ?」
「えっ、沖田さん?開いてますよー」


僕の返事を聞いた沖田さんは、ドアを開けて部屋に入ってきた。


「失礼しや〜す」
「こんにちは。もう帰ったのかと思ってました」
「ちょうど良いから俺ら全員泊まりなんですぜ」
「そうなんですか?」


真選組トップが全員こんなとこでのんびりしてて良いんだろうか。


「時に新八君。旦那は?」
「あぁ、銀さんはちょっと諸用で出てますよ」
「そうですかィ。ちょうど良い」
「ちょうど良い?」
「いやいや。何でもないですぜ」


沖田さんはベッドに腰掛けていた僕の隣に座った。


「あ、お茶いれますか?」
「いや大丈夫でェ。」
「そうですか?で、沖田さんは何しに来たんですか?」


そう聞くと沖田さんは眉をハの字にして、切なそうな顔をした。


「?沖田さん?」
「新八君に悪い事したなって思いやして…」
「へっ?」


沖田さんは傷がついた僕の頬をするりと撫でた。


「おき、沖田さんっ?」
「何ですかィ?」


沖田さんは目を細めて優しげな表情をしている。


「な、なんか変ですよ」
「そうですかィ」
「あの…」
「………」


沖田さんは未だ治療済みの頬を撫でてくる。


「何です?ただの傷ですよ?」
「分かってやす…けど」
「痛っ」
「………」
「いっ…、ちょっと!」


いきなりグイグイとその傷を押してきた。


「いたたたたっ!」
「………」
「痛いです!沖田さん」
「へぇ」


そう返事をした沖田さんはニヤリと口端を上げた。


「…このサディストォォ!!」
「今更ですぜ」


沖田さんは無表情のままヘラヘラ笑って、やっと傷から手を離した。


「なんですか?あんたわざわざ僕を痛めつけに来たんですか?」
「趣味でして」
「何キッパリ言い放ってんですか。胸張って言える事じゃないっスよ」


すると沖田さんはゴソゴソとポケットを探って何かを差し出してきた。


「なんですかコレ?」
「見て分からねぇのかィ?眼鏡替えるべきですぜ」
「いや分かりますよ。薬ですか?」
「あげやすよ」
「へっ?」


グイッと薬を押し付けてきたので、とっさに受け取ってしまった。


「どうせ万事屋にある薬は安物だろィ。」
「失礼な!」
「安物は治りが遅いですぜ」
「それでわざわざ薬を渡しに?」
「…………」
「あ、ありがとうございます」
「や…」


沖田さんってこういうとこ優しいんだよね。


そんな時、扉を叩く音がした。


「新八く〜ん」
「あ、山崎さん?」
「ちっ…山崎かィ」
「開けて平気〜?」
「大丈夫ですよ〜?」


山崎さんが扉を開けると沖田さんは扉へ歩いていった。






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