短編

白い孔雀はどこにいる
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お味噌汁をよそいながら、坂田さんに話しかけた。


「あ、やっと起きてくれましたか」
「ん〜…」
「座ってて良いですよ。」
「…いちご牛乳」
「ラッパ飲みはダメですよ」


坂田さんはいちご牛乳を飲むため、台所にやってきた。


毎朝飲んでるから特に気にせずご飯をよそっていると、突然腰に腕が回った。


「ひっ!?」
「何してんの?」
「いやあんたが何してんの!?」


坂田さんが冷蔵庫を素通りして僕の後ろに来、僕を抱き締めていた。


「新八補給〜」
「もうっ。ご飯よそってるんですから、危ないですよ」
「うん、邪魔しない」
「………」


ぶっちゃけもう邪魔なんだけど。


でもやっぱり、腕を払うほど嫌ではないんだ。


「良い匂い。腹減った」
「坂田さん、寝過ごして朝ご飯食べてないですからね」


坂田さんは僕の肩に顎を乗せて、台所に並べられたご飯を覗き込んだ。


「今日の味噌汁わかめと豆腐?」
「そうですよ。坂田さん好きでしょ?」
「好き好き」
「坂田さん零すから、お盆に乗せちゃお」
「子供か俺は」


その場から手が届く範囲で用意するのにも限界があり、遠慮がちに坂田さんに頼んだ。


「あの…ちょっと1回離れてくれないですか」
「却下」
「即答!?お昼の用意できないんですけどっ」


すると腰に回る腕に力が加わり、ぎゅうぎゅうと抱き締められた。


「良いじゃん。昼はこれで十分だよ」
「サラダ冷蔵庫に入ってるんですって」
「へ〜」
「へ〜って、あんたね…」


はあ、と溜め息をつき、背中の坂田さんに寄りかかるように少し体を傾けた。


「お、甘えたくなった?」
「………最近ずっと仕事行ってたから」
「ごめんごめん」


からかい笑うような声で言い、僕の耳に一瞬のキスをした。


腰に回っていた坂田さんの腕は、肩まで上がった。


「はあ〜…新八の匂い安心する」
「……坂田さん疲れてますか?」
「何で?」
「働きづめって珍しいから」
「よく寝たから大丈夫。」


良かった。

ここ1週間珍しく残業だらけで頑張っていた。


学校がある僕は毎晩夜更かしするわけにもいかず、同棲してるとは言っても、あまり会えていなかったのだ。


「しーんちゃん」
「はい?」
「キスしたいな」
「っ……」


いきなりの発言にピシリと体が強張った。


「なっ…」
「して良ーい?」
「………っい、いつもは、そんな事聞かないくせに!」
「今日は新八優しいみたいだからね」


突然くるりと体の向きが変えられ、慌てる前に1回目のキスがされていた。


ちゅ、と唇が触れるだけのキス。


「い、いきなり…」
「真っ赤。可愛い」
「んん、」


くちゅくちゅと深いキスをしたり、ちゅっと一瞬だけのキスをしたり。


そんな事をしていちゃついていると、いつの間にかお味噌汁が冷めきっていた。






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