短編

□孤独な愚者の夢想
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俺には可愛い恋人が居る。


銀魂高校の一教師として、バレたら速攻免許剥奪、クビ確定のお付き合い。


だけど、あんな可愛いのを手離すつもりはない。


と、思うほど俺はその恋人を愛しちゃっているわけだが、相手はどうなんだか。


「じゃあ今日はかいさ〜ん」
「ちょっと先生。授業もしっかりやらないんですから、号令くらいはしっかりやりましょうよ」


恋人というのは、このモロ学級委員長キャラな志村新八。


地味だ地味だと言われるが、個性の塊のようなこのクラスでは逆に浮き立つキャラ。


「じゃあ新八が号令かけろ〜」
「もう!きりーつ、れー」


号令が終わると直ぐにぎゃあぎゃあと騒がしくなる教室。


先生ばいばーい、と言ってくる生徒達に挨拶を返し、帰る支度をしている新八の元へ歩み寄った。


「新八〜、準備室来〜い。」
「え、またですか?今日は何です?」
「テストの丸付けが進まない」
「も〜!バイトありますから、ちょっとだけですよ?」
「はあい」


先に準備室に向かうため、出席簿を持って教室を出た。


「…………」


声かけてあの反応ってどうよ。


普通はさ、放課後準備室で2人っきりで会おう、なんて恋人に言われたら


「はいっ…先生…!」


って頬赤らめて、目輝かせるもんじゃないの?


教師と生徒という手前、あんま2人っきりになれないなら尚更。


「………はぁ」


嫌われたって感じじゃないけど、…飽きられた、っていうか…。


最近忙しい忙しいって、学校以外じゃ会ってくれないし。


「先生、歩くの遅いですよ。追い付いちゃいました」
「うおっ。早いな」
「先生見えたから走って来ました」
「………」


う〜ん。

やっぱり嫌われては、ないよなぁ。


「テストっていつやったやつですか?」
「うちのクラスじゃねぇよ。隣の」
「僕丸付けて良いんですか!?プライバシーとか…」
「気にしない気にしない。」
「も〜。」


2人でそんな会話をしながら歩いていると、直ぐに準備室に着いた。


鍵を開けてドアを開いた。


「新八はそこの机の上のやつな」


教室にあるのと同じ机が1つ置いてあり、そこに1クラス分積んであるテストを指差して言った。


「先生は?」
「ちょっと一服」
「おい!仕事しろよ!」
「あっ!こらてめっ」


出したタバコを奪い取られた。


「テストの丸付け終わってから返してあげます!」
「てめっ」
「給料貰ってんだから働いて下さいよっ」
「ちぇ〜」


俺は渋々タバコを諦め、机を挟んで新八の向かいに座った。


「わ。漢字テストじゃないですか」
「はねとかはらいとかちゃんと見てね」
「1番面倒くさいやつだ〜」
「だからお前呼んだのよ。はい、赤ペン」
「も〜。バイトの時間までですからね」


新八は明らかに、面倒くさいな〜という表情で赤ペンを受け取った。


「バイト何時から?」
「今日は5時半からです」
「ふ〜ん」


新八は俯いてテストの丸付けを始めた。

動きに合わせて、垂れた前髪がさらさらと動く。


「ちょっと。先生もちゃんと手動かして下さいよ?」
「んあ。あぁ、はいはい」
「まったく」


ボケっと見とれていると怒られたので、俺も赤ペンを取り出して丸付けを始めた。








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