短編

□俺の着流しはせっけんの匂い
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冬。寒い日々が続くある日、万事屋には珍しくある依頼が舞い込んだ。


「……ジャケットの撮影?」


神楽ちゃんと買い物から帰ってくると、机の上にお金が入った封筒と仕事が書かれた紙が置いてあった。


「あぁ」
「何アルか、それ」
「お前らが買い物行ってる間に依頼人が来てな。ただジャケットを撮る仕事だってさ」
「何で僕と銀さん…」


ジャケットなんて女の子居た方が良いんじゃないの。


それか人気の土方さんとか沖田さんとかさ。


「そりゃお前、最近急激に銀新好きが増えたからだろ」
「ぎゃあァァ!!何言ってんスかあんた!」


世界を崩壊させるような発言をした銀さんの口を塞ぐ。


すると、大人しくしていた神楽ちゃんが騒ぎ出した。


「何でヒロインの私は撮らないアルかー!不満ヨー!」
「まあまあ。今回は衣装交換で撮るらしいんだが、お前のサイズだと誰も交換できないんだとさ」
「サイズに合わせて何か作るアルー!定春も可哀想ヨー!」
「きゃんっ!」
「うるせーうるせー。入った金で酢昆布買ってやっからよ」


神楽ちゃんは酢昆布という言葉に惹かれたのか、ピタリと押し黙った。


「まあ撮影だけなら楽な仕事ですもんね。良かった」
「……ぶ〜。私と定春も撮ってもらいたいアル〜。」
「今度カメラ持ってきてあげるから、ここで撮ろうよ」
「…分かったネ。それなら良いアル!あっ、もうドラマの再放送の時間ヨ!」


神楽ちゃんは買い物袋から酢昆布を取り出し、テレビを付けて直ぐに見入っていた。


「その仕事いつですか?」
「急だけど明日だとさ」
「ほんと急ですね…」
「持ってくもんとか特にないってさ」
「分かりました。」


明日は依頼があるという事で、僕はその日万事屋に泊まる事にした。


「明日僕等朝から仕事行ってくるからね」
「分かったアル」
「朝ご飯は普通に食べてくから、いつも通りの時間に起こすよ」
「ほいほい。おやすみヨ〜」
「おやすみ」
「すみ〜」


押し入れに入る神楽ちゃんを見て、僕は隣に座る銀さんの方を向いた。


「僕等も寝ましょうか?」
「お〜」
「戸締まりしてきますね。布団敷いといて下さい」
「へ〜へ〜」


…珍しく渋らずに言う事を聞く銀さんに忠告しておかないと。


「2枚ですよ!」
「…は〜い」


銀さんは明らかに肩を落として和室へ入って行った。


「昨日もシたのにできるかっての…」


そうぼやきつつ、玄関の鍵をチェックした。


廊下と居間の電気を消し、銀さんが居る和室へ入った。


「布団敷いてくれましたか?」
「お〜。」


ちゃんと2枚布団が敷いてあり、奥の布団の上に銀さんが座っていた。


いや、確かに布団2枚敷いてあるけど…


「……くっ付きすぎじゃないです?」
「全然だろ。むしろいつもより離れてるだろ」
「いやこんなピッタリくっつけなくても良いでしょ」


手前の布団を掴み、離すために引っ張ろうとした。


「あっ!こらてめ!」
「ちょ、何ですか!」


すると、銀さんがその布団の反対側からぐいぐいと引っ張った。


「ヤらせてくれねぇんだから、布団ピッタリくらい良いだろーが!」
「嫌ですよー!銀さんの足とか乗ったら重いですもんっ」
「じゃあ俺の足の上で寝れば良いじゃんんん!」
「どんな状況ですかそれ!もう寝るという行為じゃない事は確かです!」


そんな争いが続き、結局僕が根負けしてピッタリくっ付いた布団で寝る事になった。






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