短編

□傾蓋、の如し
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「近藤さんに、事故ったんで至急お金を振り込んで下さい、って言やァ良いじゃねぇですか」
「僕は詐欺師ですか!!近藤さんもポロンと騙されそうで怖いわっ」


学校でのお昼休み中に、1番仲の良い友達に相談してみた。

この友達、沖田さんは姉さんの旦那さんである近藤さんの知り合いで、息子のような感じらしい。


「金が足りねぇなら借りるか、出ていくかしかねぇだろィ」
「うっ…」


沖田さんは勝手に僕の水筒のお茶を飲んだ。


「近藤さん達だって、家でベタベタなんかしてねぇでしょ」
「そりゃあの2人だからそれはないでしょうけど…でも…よ、夜とか…」
「夜はそりゃあヤってるだろうねィ。」
「ちょっと!もっと隠して下さいよっ」


新婚なんだから子供が欲しいに決まってる。だから夜とか、僕居たら絶対気まずいじゃん!


「新婚はセックスしまくりですぜ」
「ちょ、セッ…とか言わないで下さいよ!」
「お前高3だろーが。あぁ童貞君でしたかィ」
「ぎゃ!」


沖田さんはニヤニヤしながら、上履きを履いたままの足で股間を触ってきた。

いくら机の下で見えないからって…!


「セクハラ野郎か、あんた!」
「けっ。誰がメガネなんかに手ェ出しやすか」
「じゃあ今すぐ足を引っ込めて下さい」
「ちぇー」


僕の股間を触っていた足は、大人しく床に落とされた。


「例の坂田さんって人に払って貰ったら良いんじゃねぇですか?」
「そんな事できませんよ〜…」


勝手にお茶を飲むのを放っといて、だらんと机に突っ伏した。


「金持ちなんだろ?あのボロアパートの家賃なんて、チロルチョコ買うようなもんじゃないんですかィ」
「まあ、そうっちゃそうなんですけど…。」
「可愛くねだってみなせェ。坂田さん新八に惚れるかもですぜ」


ドキリ、としてしまった。


「…なぁに言ってんですか。坂田さんは男の人です」
「とか言いつつ、お前はよく男に声かけられるじゃねェですか」
「おっ、沖田さんだってそうじゃないですか!」
「俺は女にも声かけられます〜」
「うっ…」


沖田さんに口答えしたのが間違いだった。


「はあ…大人しく姉さん達のとこ行くしかないかなぁ…」
「坂田さんに1回相談してみなせェよ」
「だって、そんな事したら坂田さん責任感じちゃうじゃないですか。俺のせいでバイト休んで…とか、あんなに遊びに誘ったから…とか」


お弁当を食べ終わり、カバンに閉まった。


「ほんとの事ですぜ」
「………。でも、それで気遣われて…これから誘われなくなっちゃったら…嫌だから…」
「………ったく…鈍感メガネは大変ですねィ。」
「はい?鈍器のメガネ?」
「はいはい」
「ちょっと!ツッコんで下さいよ!」
「穴になら良いですぜ」
「もうお茶飲んで黙ってて下さい」


この日1日、解決策は編み出されなかった。






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