短編

偉人にだって予想できない事がある
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最悪だ。先生は最悪だ!最悪最悪最悪!!


長く付き合ってたのにっ、あんな人だったなんて!


「…悔しくなんかっ…悔しくなんか…ないっ…!」


流れる涙に気を払ってる余裕などなく、バタバタと家まで走った。


先生に撫でられた内ももと腰の熱が消えない。


先生とキスしたり、エッチしたりした思い出だって、まだ新鮮すぎるのに。


「先生の、バカっ…!」


涙を払うように、ただひたすらに走った。


そのせいでドン、と人にぶつかってしまった。


「わっ!」
「…っ」


走った勢いでぶつかったため尻餅をつきそうになったが、相手が腕を引っ張って支えてくれた。


「す、すみませんっ」


すぐさま頭を下げると、頭上から聞き覚えのある声がした。


「……お前」
「えっ…あ、高杉先生!」


顔を上げて見ると、片目の包帯とキセルが特徴的な高杉先生が立っていた。


学校内で1番恐れられ、悪名高い先生。


「…銀八のところの奴か」
「…そうです。し、志村です」
「てめぇ…」


今にもキレそうなすんごい目力で、スッと腕を伸ばしてきた。

殴られると思い、目を瞑る。


「すっ…すみませんすみません!あの急いでましてそれで、」


殴るかと思ったその腕は、僕の頬を撫でた。


「え……」
「何高校男子が泣いてんだよ」
「わ、わ…」


メガネを押し上げて、ゴシゴシと指で涙を拭われた。


「ったく…みっともねぇぞ」
「すみません…」


高杉先生って案外優しいんだ…。関わりないし、怖い噂しか入ってこないから…。


「くくっ…恋人と喧嘩でもしたのか?」
「え…!?な、何で…」
「首筋にいつだかのキスマーク付いてんぞ」
「えっ!?」
「お前みたいな奴がもう経験済みたァなァ…」
「あっ…ちょ、」


高杉先生は、するりとYシャツの襟に手を滑り込ませた。


「年上の女にでもヤられたか?」
「ん、ちょっと…触んないで下さいっ…違いますし!」


高杉先生は、キスマークが付いているであろう場所を指先で撫でた。


「ほう…じゃあ男に掘られたか」
「なっ…ちが、違いますゥゥ!」
「まあ何でも良い。」


何だか高杉先生のおかげで涙は止まった。


「何なんスか…もう」
「男が泣きながら走ってんなよ。恋人と喧嘩したなら尚更な」
「……喧嘩どころじゃないですっ…」


なんかヤケになって言ってしまった。先生に言ったところで何も変わらないのに。


「別れ話かよ。じゃあ俺にするか?」
「…………先生、学年の女生徒10人には手ェ出してるって本当なんスね…」
「くく、俺の勝手だろ。」
「変態だ…」
「あっちが寄ってくんだからしゃあねぇよ。じゃあな志村。寂しくなったら来いよ」
「行きませんーっだ!」


高杉先生とのおかしな出会いはここで終わった。






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