恋するお題

□16.ときめく
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ホスト銀時(24)×高校生新八(17)



「てめぇ年下のくせに生意気言ってんなよ!」
「入ったばっかのガキがトップ取ろうなんて甘ェんだよ!」

散々殴って蹴って気が済んだのか、そう言い捨てて2人は歓楽街へ消えた。

「ぐっ…けほ…。」

唇や頬が切れてヒリヒリする。血の味がするから多分口の中も切れたんだろう。

「…くっそ…」

お前らに魅力とやらがなくて客が俺に金注ぎ込んだだけで、何で俺が殴られなきゃなんねぇんだよ。

「ちっ………」

起き上がるのも面倒だ。

このまま眠っちまいてェ。なるようになれ。目覚めてどこに居ようが関係ない。
もう、どうにでもなれ。

そう思うと直ぐに、俺の視界は暗闇に包まれた。

「…あ…ました…さん…」
「…や……平気…ろ」

何時か分からないが、ぼんやり意識が戻ると誰かの会話が耳に入ってきた。

「じゃあ俺仕事戻るからな」
「ほんとにありがとうございました。」

会話を盗み聞きしながら目をうっすらと開けると、見たことのない天井が見えた。

もぞもぞ動くと、自分が布団の中だという事に気付いた。

「…変な奴だったら直ぐ逃げるか俺に電話しろ」
「大丈夫ですよ。早く仕事戻らないと近藤さんに怒られますよ」
「あぁ、じゃあな」
「はい」

バタンと扉が閉まり、玄関の鍵を締めて振り向いた誰かと目があった。

「あっ、目ぇ覚めました?」
「……誰だてめぇ」

警戒心MAXで睨み付けながら聞くと、ガキはにっこり笑って答えた。

「はじめまして。志村新八って言います」
「志村新八…?…初対面…だよな…?」
「はい。あなたが倒れてるの見てうちに運んだんです。大丈夫ですか?」
「は…?見知らぬ俺を?」
「ケガたくさんしてたから……あ、ちょっと待ってて下さい。今水持ってきます」

パタパタと台所へ消える背中を見つめ、ふと自分の腕の包帯やら絆創膏に気付いた。

…………何あのお人好し。

「はい。お水」
「……お前何で俺にそんな親切にしてんの?」
「はい?」
「知り合いでもねぇし、傷だらけで道端に倒れてるし、銀髪で赤い目だし……不審要素満載だろ」
「でもケガしてたから……。お水受け取って下さいよ」
「……さんきゅ…」

押しつけられた水を一口飲むと、口の中の傷にしみた。

「お兄さんの名前は?」
「坂田銀時」
「あれ、金時さんじゃなくて?」

俺のポケットから出したのか、名刺を見ながら聞いてきた。

「あぁ…それは源氏名」
「やっぱりそういう世界の人なんですか?」
「……無縁そうなのによく分かったな」
「姉がお水の世界の人なんです」

意外だ。こんな風に屈託なく笑う奴の姉貴がキャバ嬢なんて想像つかない。

「坂田さん、なんであんなとこで倒れてたんですか?」
「あ〜…なんか先輩の客盗ったらボッコボコにされちゃって。そしたらなんかも〜どうでも良くなっちゃって、寝た。」
「あんなとこで寝たら風邪ひきますよ!」

いや、ツッコミどころそこ?

「つっても家ねぇし、店帰んのもダルかったし」
「家がないって?」
「家族皆死んでっからさ、俺。だからもう俺も良いかなとか…ぶっ!!」

いきなりバチン!!と額を叩かれた。

「…ってぇ」
「あんたバカですか?家族が死んだから自分も死ぬんじゃなくて、家族が死んだからその分自分が生きるんですっ!僕は父と母が死んだときそう誓いましたっ」
「………」
「それにもう坂田さんは1人じゃないです。」
「……は…?」
「僕が家族になってあげますよ」







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