□夢/神威+神楽
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昨日の夜から、神楽の機嫌は一向に悪くなる一方だった。何があったのか尋ねても、神楽は黙りとした。そんな神楽に参った銀時と新八は、しばらくそっとしてやろうと心遣い、しばらく様子を見ることにした。

それが、5月の最後の日だった。



朝、目を覚ます銀時は、中々起きてこない神楽に、此処最近の不機嫌さに不安を覚え、ノックもせずに勢いに任せて押し入れの襖を開けた。


そこには頭まですっぽりと布団を被る神楽の姿があった。もう梅雨時だといえ、蒸し暑い日が続くにも関わらず、暑苦しい姿に、銀時は布団を引っ張って、神楽を引きずり降ろした。


「何やってんだよ」
「今日は一日中寝てたいネ」
「バカ言ってんじゃねぇよ、今日は仕事だ」


神楽は首を横に勢いよく振ると、いそいそと押し入れの中に戻っていった。銀時はあきれ混じりの溜め息をつくと、「わーったよ」とだけ言って、押し入れを開けることはなかった。


数時間後。銀時はテレビを見て、時間を潰していると、何気なく新八が家にやって来た。新八は辺りを見渡して、「神楽ちゃんは?」と尋ねた。銀時は押し入れを指差し、首を振る。


「寝てるんですか?」
「みたいだとよ、そっとしてやれ」


銀時と新八の会話がボソボソと聞こえてくるが、それを遮断するように布団を被る。銀時の見ているテレビが今日の日付を告げる。



「おはようございます、6月1日、朝のニュースです。」




仕事、行ってくるからな


開かない押し入れの襖に向かって言った銀時は、返答がない様子に新八と顔を見合わせた。

玄関が閉まる音がしても、神楽は出てこようとはしなかった。本当に深い眠りにつくと同時に、悪夢に魘されていた。


幸せな家族に囲まれて、今日はお祝い事だからと神楽が喜ぶ姿を見て、父や兄は嬉しそうに笑った。

まるで自分のことのように喜ぶ神楽に、年に一回の嬉しいイベントとなった。それが兄、神威の誕生日だった。


ふいに、神楽の髪を優しくなでられる。涙を流しながらも眠り続ける神楽に、その手は直接体温に触れることなく、枕だけが冷たく濡れた。


昔に戻った夢を、見たのだ。









2010/6/3
6月1日、神威誕生日

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