□無題/土銀
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屯所の縁側に腰をおろして一息つく。


庭で取っ組み合いをしてる神楽と沖田を遠目で見ながら、お茶を一口。 隣にいる新八が持ってきた焼きせんべいを片手に、それを見る。


「アイツらは元気だなァ。」
「ジジ臭いですよ銀さん。まだ僕らだって若いじゃないですか。」


新八もお茶を一口飲んで、二人を見る。 まるで兄妹喧嘩を見てるかのような光景に、乾いた笑いしかでてこない。

そんな新八がせんべいの入ってる箱に手を伸ばすと、背後に影が重なった。


「なにしてんだ、テメェ」
「あ、土方さん」


振り向く新八の背後には、仏頂面の土方が腕を組んで仁王立ちしていた。 土方はギロリと鋭い目で銀時を睨む。


「んだよ、いちゃ悪いか?」
「悪いに決まってんだろ、帰れ!」


くわえていたタバコを強く噛みしめると、銀時はやれやれと言わんばかりに溜め息をついた。


「ケチケチすんじゃねぇよ、ハゲんぞ」
「んなんで、いちいちハゲてられるか!」


土方が大きな声を張り上げると、取っ組み合いをしていた神楽と沖田が手を止めて、銀時と土方の方を見た。


「なんでェ、土方さん。いたんですかい?」


イタズラっぽく笑う沖田が土方に尋ねると、土方はタバコを一吹きして、「悪かったな」と嫌みったらしく言った。


「あーあ、悪い悪い。ったく、茶が不味くなる。 ジミー、おかわり」


そう言った銀時の湯呑みはすっかり綺麗になくなっており、しばらくすると山崎がやって来て、銀時の湯呑みを取り上げ、「わかりました」と言って台所へ消えていった。


「居座んな!何のようだ!」
「用事?あー…なんだったんだっけな」
「ほら、アレです」
「アレ?あぁ、アレな」


銀時と新八の会話に主語も動詞も感じられず、土方の眉間にシワがよるばかりだった。


「とりあえず、なんか他に菓子ねぇの?甘いやつで。」
「ねぇよ!用がねぇならさっさと帰れ!」


土方が怒鳴り散らすと、銀時は溜め息をついた。 しばらくして縁側に戻ってきた山崎は、丁寧におぼんに乗せて持ってきた湯呑みを銀時に手渡した。 銀時はそのお茶を一口飲んで、一息ついた。


「お前さ、」
「?」
「それ俺のなんだけど」
「うっせ、ケチケチすんじゃねぇ」


土方が手を伸ばしたお菓子の箱を指差した銀時は、呆れた顔をした。土方は、「山崎、茶」とだけ言い、山崎はまた台所へと姿を消した。そしてまた、銀時はお茶を一口飲む。そんな様子を見た土方が口を開き、尋ねる。


「んで、テメェ」
「あ?」
「用件はなんだ」
「用件?あぁ、用件な」


銀時は思い出したかのように上の空に目を泳がせ、土方を見て一言。


「おめぇよぉ、俺に何か言うことあんじゃねぇか?」
「あ?」


いつもとは違う表情で尋ねてくる銀時に、土方は顔を歪めた。特に思い当たる節が見つからず、こちらから聞き直す。


「は?」


土方の思わず出た言葉に銀時は呆れた顔をして、湯飲みを置いた。


「そ、なら用はねぇ。よしお前ら、帰るぞ」


銀時が立ち上がり、そそくさと一人先に屯所の出口まで歩いていく。


「今日のところはお預けアル!次は、容赦しないネ」
「あっ、お邪魔しました!ちょっと、銀さん!神楽ちゃん!」


そそくさと去る銀時と神楽に、その後をついて行く新八。 去って行った三人の姿を見届けた


「なんなんだ、アイツら」


去っていった三人を見送りつつ、土方がボソッと小さく呟いた。沖田はしばらく考えた後、口を開く。


「土方さん、何かしたんですかィ?」
「別に、覚えがねぇ」


土方が腕を組み、縁側の廊下に腰掛けた。置いていったお菓子の箱に手を伸ばし、食べていく。同時に箱を挟んで沖田が隣に座る。


「土方さん」
「あ?」
「ここ、付いてますよ」


沖田が自分の右の口元を指差す。土方は顔を少しだけ逸らし、腕で口元を拭う。


「子供みたいですね、土方さん」
「うっせ」


土方が横目で沖田を睨みつけると、沖田はそんな土方を見て小さく笑った。









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