□無題/銀+土
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パフェ、パフェ、パフェ。

呪文のように三度唱えてみたが、パフェどころか何も出て来やしない。腹が減って、耐えきれなくなった空腹感に、自分は死の呪文にでもかかったような暗示にかかる。

甘いものが食べたくて、でも甘いものばっか食べてると糖尿病になると医師に脅され、寧ろ買う金がねぇことから控えていたら、ついには幻覚を見るまでとなった。

今だって、呪文唱えりゃ出てくんじゃね?みたいに思い込んでいるあたり、迎えが近いのかもしれない。


「あー…、パフェ食いてぇー」


パフェの単語をいくつ言っても言い足りないぐらい、まるで恋人の名前を呼ぶかのように繰り返す。

生憎、本物の恋人は隣で不機嫌そうにタバコを吸っていた。けして美味そうに吸わないタバコは、コイツにとっては自己満足で、一種の娯楽に過ぎないのだろう。

んなら、俺もパフェ食ってる時は同じだ。


隣のコイツが味わう娯楽なら、どんなものかとタバコを奪い取って吸った。


「苦っ」


どうやら糖の味とは、程遠いらしい。





2010/4/3

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