壱
□サンタさんの警察官/真撰組
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サムライだか、なんだかんだと言ってるわりに、やってることは日本文化メチャクチャな気がしてならねぇ。
そう言い始めたのは、屯所の広間で一人足を崩して座り込む男。 その男、タバコをふかして溜め息混じりに呟いた。
「で?またアイツは何しやがったんだ。」
男の問いに答えたのは、これまたひとりの男。 その男は山崎と呼ばれ、「今度は、食い逃げとして容疑がかけられています。」と言った。
「テロやら公務執行妨害やらなんやらで、次々と問題起こしやがって。今度は食い逃げたァ、暇なのかあの野郎は。」
タバコを乱暴に灰皿に押し付けた男、土方は額に青筋を立てた。 ギロリと山崎を睨む土方の目は瞳孔が開ききっており、今にも殺されそうだった。 山崎は身震いをし、そそくさとその場を後にした。
「まぁまぁ、落ち着いてくだせぇ。」
「落ち着けるか」
出て行った山崎が開けたままにした襖の外側に仁王立ちする沖田は、肩を少し上げて笑った。
「俺らは公務員ですが、あっちは自営ともいえる万事屋。少しぐらい、いいじゃないですか。」
「いいわけねぇだろ」
土方が新しいタバコに火をつけるなり、鋭い視線で沖田を見る。 沖田は笑いながら、土方のもとに近付き、床に置いてある報告書を拾い上げ、目に通す。
「世の中、平和になったもんだ」
沖田が呟くと、土方はタバコを一吹きした後、小さく呟いた。
「本当にな。」
沖田はその返答に小さく笑い、「そういえば」と切り出した。
「今日、何の日か知ってますか土方さん。」
「あ?そういやァ、俺やお前や山崎以外、人見かけてねぇなぁ。何かあんのか?」
「土方さん、知らねぇんですかい?どーりで女にモテねぇわけですわ。」
「いや、それ関係ねぇだろ!」
「大ありでさァ。今日はクリスマスですぜ?」
「クリスマス?」
言われた後、土方は思い出したかのように「あぁ、そういえば。」と言った。
「とんだクリスマスですがね」
「あ?なんでだ?」
「どうやら下町で酔っ払いの乱闘。及び窃盗があるみたいでさァ。」
「乱闘に窃盗だァ?」
「乱闘は、どうやら内容はくだらねぇみたいですが、窃盗の方は旦那が関わってきてるみたいですぜ。盗んだのは、クリスマスツリーだとか。」
「ツリーだ?アイツら、ツリー買う金もねぇのか。」
土方は呆れた表情で溜め息をついた。
「んで、俺ァその事件を片付けようと思ったんですが、生憎隊員たちは休暇を取ってましてね、土方さんにご同行お願いしようと思いまして…」
「それを早く言え!!」
土方は点けたばかりタバコを灰皿に強く押し当てて、刀を片手に沖田と共に広間を出た。急いでパトカーに乗り込み、土方がハンドルを握る。
「やっぱり、サムライだか、なんだかんだと言ってるわりに、やってることは日本文化メチャクチャじゃねぇか。」
隣で土方が呟くと、沖田はフッと笑った。
2009/12/24