壱
□饅頭にあんこ/銀+松陽
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お墓に添えてある饅頭の中身は、あんこ。 甘くないから、俺は好きじゃねえ。 どちらかといえば、しょっぱい。
塩分含まれてんじゃねぇのかよ、この饅頭。 とか思いながら、口に頬張った。 しょっぱい、とか思いながらも食べていく。
お墓参りなんて、かぶき町に来て以来じゃねぇか? いや、前にも来てたっけ? まぁ別にいいけど。
手も合わせず、線香も焚かず、花も添えずに、ただ来ただけ。 我ながら図々しいな。 オマケに饅頭まで頂いてるとは、罰当たりだろ。
まっ、罰がなんだとビビってちゃ俺らしくもねぇ。 つか寧ろ、俺らしいってなんだっけ。
せめて墓石に水をかけてやりたいところだが生憎、手は饅頭で埋まってるし、水持ってねぇし。 小便ならあるぜ? 嫌だろうけどな。
「やっぱ、この饅頭しょっぺぇ」
目から頬へと伝う調味料のおかげで、クソしょっぺぇ饅頭。 まじぃ。
あぁ丁度、水が欲しいんだ。
この水でよけりゃ、くれてやらァ。
いい大人が、泣いてんだ。
誰でもねぇ、アンタのためにだ。
大人になったよ、松陽先生
2009/10/16