壱
□音/万事屋
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雪は音を吸収する。
雪の降る中、刀を抱えた俺を拾ったババアにノコノコと着いていって、そのババアが経営する店の二階を借りて、住むことになった。俺は万事屋を経営した。
一人で。
一人で暮らす生活が続いたので、音が無い生活だった。初めての依頼で貰った金で、テレビを買った。
テレビを付けて、音を作った。
寝る時も、テレビを付けて寝た。けして砂嵐でも、無音よりはマシだった。あの緊張感を思い出すよりは、幾分も。
「ねぇ、銀ちゃん。寝るならテレビ消すアルよ」
俺の家に新八が出入りするようになり、神楽が住むようになった。音が増えて、テレビは付けたいときだけ付けるようになった。
神楽は寝る前に、ちゃんとテレビを消してから、いつものように押し入れに入っていく。
「おやすみ、銀ちゃん」
「おぅ。なぁ、神楽」
「何アルか?」
「お前のイビキ、うっせぇぞ?」
「…お前もな」
俺は今が、結構気に入っている。
2011/11/9