壱
□無題/銀+長谷
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公園にある三人がけのベンチを男二人が、それぞれ1.5倍の幅で占領し、堂々と腰を下ろしていた。
自分より背の低い女の人が目の前を通り過ぎ、風でフワリとなびかせた短いスカートに、思わず男は視線を向けてしまう。
綺麗な足をした女の顔を見たら、それは驚くことに、自分よりも明らか年上で、肩をガックリと下げる。
「期待させんなよな」
大きく溜め息をつきながら、頭を無造作に掻きむしる銀時に、隣りに座る長谷川が銀時の肩に手を乗せた。
「そーいうなよ銀さん。しょうがねぇよ、今じゃ世の中も減らすのが流行ってんだろ?それとおんなじさ、若い子も減らしてんの。来るかもしんねぇだろ、年増ブーム」
「んなブームは、俺ん家の真下だけで十分だ」
長谷川がサングラスの奥の瞳を歪ませ、困ったように苦笑した。
「でもよ、銀さん。そろそろ相手見つけねぇとヤバいぜ?」
「別居してるヤツに言われたくねぇよ」
「別居してても離婚はしてねぇぞ?けどよ、銀さん。銀さんだっていい年だしさ、いつまでも子守りやってても女は寄り付かないぜ?」
「俺だって好きで子守りしてるわけじゃねぇよ」
銀時が虚ろな眼差しで、ただ真っ直ぐと遠くを見た。長谷川が、その視線を辿っていくと、公園入り口に新八と神楽の姿見える。
「ああ、スマンな銀さん」
「あ?」
「子守りされてるの、銀さんだな」
長谷川が、銀時の顔色を伺いながら笑い始めると、銀時は呆れながら溜め息をついて言った。
「違いねぇな」
遠くから、神楽が手を振り、名前を呼ぶ。隣の新八は微笑みながら、神楽と声を揃えた。
「「帰(るアル)(りましょう)」」
銀時は生半可な返事をして、重そうな腰を立たせて、「じゃあな、長谷川さん」と見向きもせずに手をヒラヒラと宙で泳がせた。
その姿を見送った長谷川が、乾いた笑い声を上げた。サングラスの奥の瞳が、いとおしそうに見つめる。
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