□無題/銀+土+沖
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頭のてっぺんから、爪先まで。

よくわからない痺れが全身に回る。次第に歪む感覚に、目の前が真っ暗になりかけた。溜め息混じりに、小さく呟く。


「あー、いてぇ」


ドクドクと流れる真っ赤な色した血液は、頭から流れ落ちた。霞む目を開くのも精一杯な銀時は、木刀で体を支え、フラつく足をなんとか固定させた。


「マジで、階段から落ちて頭打つわ、二日酔いで足元も焦点も定まんないわ、どんだけついてねぇんだよ…」


大きく溜め息をついた銀時は、フラフラと歩き出す。裏路地のデカい廃ビルの壁に背中を預けて、ズルズルと座り込む。


「あー、やべぇ…。目、霞む…。シぬ。コレ、マジでシぬわ。冷蔵庫のイチゴ牛乳、賞味期間確認すらしてねぇのに…。神楽、新八悪いな…。二日酔いでシぬ」


意味のわからない戯言を呟きながら、霞む目を瞑り、スッーと息を吸い込む。あと一息で寝れそうな所を、邪魔するように声をかけられた。


「何してんだ、テメェ」
「こんな所で寝てたら風邪引きますぜ、ダンナァ。」


霞む目を虚ろに開くと、ぼやけて見える人影2つは服の色である真っ黒にしか見えなかった。声で誰か判別出来る銀時は、小さく口を開いて名前を呼ぶ。


「お前らはお呼びじゃねぇんだよ、土方沖田。」


溜め息混じりに呟くと、沖田は「死に際を、あのチャイナやメガネが見ても悲しむだけですぜ?」と、いつもと変わらぬ笑顔で言った。


「いや、シなねぇから」
「さっき自分でシぬとか言ってませんでした?」


座り込んでいる銀時を見下ろすようにして見る土方と沖田に、銀時は「独り言、聞くなんて悪趣味な奴らだな」と俯いた。


「聞こえたんだよ」
「聞かなきゃいいだろ」
「随分とデカい独り言だったみたいでな、聞きたくなくても聞こえるんだよ」
「耳でも塞いどけ」


銀時が大きく溜め息をつくと、沖田は小さく笑った。


「不幸なダンナに、もっと不幸な知らせですぜ?」


わけがわからず、銀時が首を傾げると、沖田はゆっくりと指を指した。


「冷蔵庫のイチゴ牛乳の賞味期限が切れたんで、チャイナとメガネが気を利かせて買いに行ってくれたみたいですぜ?」


そう言った沖田の指さす方向には、新八と神楽が買い物袋をさげている姿が見えた。


それを見た銀時の顔は、青ざめて苦笑を浮かべた。



「どっちが不幸なんだ?」
「そりゃァ、イチゴ牛乳の賞味期限がキレたことに関してでさァ」












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