□無題/土沖(土誕)
1ページ/1ページ






5月5日。
沖田が風邪を引いた。


それが屯所の中で広まると、きっと明日は雪が降るとか噂された。それがきっかけで、5月病になる暇もないぐらいの仕事ぶっ続けだったハズだったのだが、周りはどうやら精神的に弱っている。

きっと、沖田隊長にも倒せない重い病なのではないか。

不安が不安を呼ぶらしく、頭痛や腹痛を訴えるものも出た。沖田の症状は、医者からの診断結果から、ただの風邪と判断されているものの、周りは聞く耳を持たない。


情けねぇ。


そんな現状に肩をがっくりと下げた土方が、タバコをふかしながら刀の手入れをしていた。

もともと休みがない土方にとって、人手不足の所を、戦力である沖田が倒れてしまっては、周りの輩が戦力。それをしっかりとまとめ上げるのが自分の役目。そこまではわかってはいるのだが、ここまで弱ってしまっては、まとめ上げるのも無理な話。

仕舞いにゃ、自分も病気だと錯覚に陥る始末。ここまで来たら、情けなくもなる。


「ってことだ、早く風邪ぐらい治せ」
「また随分と横暴でさァ。見舞いに来てくれたかと思えば、そんなことですかい?」
「近藤さんも、今は大事な時期なんだ。俺一人じゃ手に負えねぇんだよ」


不機嫌そうな表情で沖田の部屋に訪れた土方は、ノックもせずに入ってくる。沖田の頭の隣に腰を下ろすなり、「早く治せ」とのこと。沖田は熱のせいでなっている真っ赤な顔が、一瞬だけ青ざめた。


「全く、土方さんも自分の誕生日なのに何やってんでェ」
「テメェが昨日相当派手に片付けてくれた仕事の書類をまとめなきゃならねぇんだよ」
「熱でテンション上がってたんで」
「なら、もっと早く仕事を終わらせるべきだろーが。」


土方は呆れながらも、手に持ってきた書類に目を通す。沖田は、その姿を横目で見ながら口元を緩めて小さく笑った。


「ハッピーバースデー、土方死ねコノヤロー」
「お前のせいで、散々だけどな。本当に過労死したら、テメェのせいだ」


その言葉に、沖田は「そりゃ、最高のプレゼントだ」と言って、重たい体の上半身を起こす。

チュッと音を立てる小さな口付けは、土方の頬へ。土方は顔を真っ赤に、沖田は悪戯な笑みを浮かべる。


「土方さん、熱でもあるんじゃないですかね?」












過去ログ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ