壱
□無題/土銀(微裏)
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いてぇよ、バカ。
色気もないその台詞に、アイツはただ「悪い」しか言わなかった。いつもなら皮肉一つ返すはずなのに、相当余裕が無かったのか、気遣ってはくれてたみたいだが、どうやら無理に犯したことの謝罪だと、のちに気付いた。
事後、男の喘ぎ声なんざ可愛くもエロくもなんにもねぇこと、改めて思い知らされた。自分の声とは判別しかねない、その喘ぎ声。耳を塞ぎたかったのに、それさえ妨害された。そして、浸すら奥に突っ込まれたアイツのソレと自分の声と、アイツのエロい顔、そして雄の臭い。
視覚、聴覚、感覚、嗅覚、全て犯された気分の俺は、吐き気がしてならない。実際、口から何が出ようが、下から白濁と血が混ざった物しか流れてこない。その流れ出る感覚も嫌だった。
「なぁ」
「んだよ」
「お前は、消えてくれるなよ」
目を細めたアイツが、手を伸ばした。俺は、その手を叩いてやった。
「誰に言ってんだ」
不適に笑って見せると、アイツは苦笑しながら「だろうな」と言った。
もう誰も帰って来ない屯所に、鬼の副長の面影は闇に溶けていった。
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