壱
□無題/銀+高
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廊下から見える誰も居ない部屋に、何度も何度も目を向けた。外の空気が入るように、外が見える襖は開いたままだが、座敷部屋は腐った畳の臭いに包まれ、赤黒い染みが点々とある。
その隣にある、同じ創りの座敷からは声が聞こえてくる。話し声に、笑い声。数人の声が交差して、隣から聞き耳を立てるが会話としては成立しない。
高杉は大きく息を吸い込み、肩をすくめた。
誰もいない空間こそ息苦しいといわんばかりに、だいぶ腐った畳の臭いも鼻についた。それが次第に畳の腐った臭いなのか、自分の服に付いている返り血なのか、それさえわからなくなる。
視線を反らさず、ただ真っ直ぐと部屋を見つめていると、不意に後ろから声をかけられる。
「何してんだよ」
ペタペタと裸足で廊下を歩く銀時が、腕を組んで偉そうに仁王立ちしている。高杉は一度銀時に視線を向け、すぐさま座敷部屋に視線を戻した。
「この戦いで、先生が戻ってくるわけじゃねぇ。」
「……」
「俺は、この世界が憎い」
そう言った高杉の拳が強く握られる。
高杉が静かに閉めた襖のピシャリとした音が、渇いて響いた。銀時はただ見ていた。
「憎い、か」
小さく小さく呟いた銀時は、振るう剣で、のちに白夜叉と名を広めた。
護り抜くために
過去ログ/映画を見た後に書いたもの