長編【壱】
□きゅう
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それから…
沖田は、サツキの元にやって来ることはなかった。時間だけが過ぎていき、一週間経った。
沖田は、いつものように仕事をしてはサボって、昼寝してを繰り返す。最近の屯所は、バタバタと忙しそうで、どうやら事件の新しい手がかりを見つけたらしい。
今日は事件が解決に向かっているということで、屯所にいた隊員たちほとんどができでていたが、沖田は屯所の廊下でうたた寝していると、黒い影が覆い被さった。目を開けると、赤い傘をさすチャイナ服の彼女が、見下ろしていた。
「なんでェ、チャイナか」
「お前、何でこんな所にいるネ」
「そりゃあ、此処が俺の家だからでェ」
「そうじゃないアル」
沖田は深く溜め息をついた後、「あのなァ」と切り出した。
「どこから聞いたか知らねェが、お前には関係ねェ」
「関係ないけど、頼まれたアル」
「は?」
「お前を連れてこいって、頼まれたアル」
「…バカな女だな」
沖田が小さく呟いた後、体を起き上がらせて立ち上がった。大きく背伸びをした後、神楽を見た。そして何か言いたげそうな口を開き、小さく笑った。
「あの女、目見えてるだろ。それに、事件の真相も全部知ってる。そんでアイツァ、事件の黒幕だ。だから、わざわざ捕まるようなもんでェ。テメェもバカだが、あの女も相当バカだ。」
「逃がすつもりだったアルか」
「んなこと、俺がすると思うか?」
「ねェな」
「ただ、兄貴まで警察に売るほど自分の身が大切ってのは、わからなくもねェからな」
沖田はそれだけ言うと、屯所の中に入って行った。神楽はその背を見送り、帰り際にサツキの家へ寄っていこうと足を運ばせた。
2010/7/4