長編【壱】
□なな
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いつもトラブルメーカーのアイツが、また事件に巻き込まれている。それも、自分を斬ろうとした男の妹に近付くなんて。
山崎が帰った後、神楽は沖田の訳の分からない行動に、ただ首を傾げた。それでも、沖田の気持ちが分からないでもない気もする。きっとそれは、同情と嫌悪を表しているんだろう。
「バカだナ」
そう呟くと、銀時はソファーに寝転がり天井を見上げ、目を瞑った。
「アイツなら、大丈夫だろ」
しばらくすると寝息が聴こえてくる銀時に、新八と神楽は呆れた眼差しを向けて、重い溜め息をついた。
☆
その日、
飽きず飽きずに、また今日もやって来た。
実際、思い付きで足を運ばせるので、そう頻繁に来てるわけでもない。前に来た日と今日までに、かなり日は開いていた。
相も変わらず、サツキはいつものように縁側に座って、どこを見てるわけでもなく、ただそこにいる。
「何を見てるんでェ」
「空」
「見えないのに?」
「雰囲気だけ」
開かない目がこちらを向き、沖田は困ったような表情を見せた。微妙な空気が流れる中、沖田は静かに口を開いた。
「そろそろ、仕舞いにしましょうぜ…」
サツキは主語のない言葉に首を傾げて、沖田に「…何を?」と尋ねた。
「俺が真選組だって、知ってんだろ」
沖田は妖しく笑うと、サツキはいつもと変わらぬ笑みを浮かべて頷いた。その時、時間が止まったかのように緊張が走る。
風だけがいつものように、涼しく吹いていた。
2010/7/4