長編【壱】

□ご
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「総悟の様子がおかしいだァ?」
「ええ、隊長ここんとこしばらく出歩くことが多いんです。」
「そんなの、前からだろ」


土方の部屋に訪れた山崎は、最近の沖田の行動を不信に思い、報告した。だが土方は、「なんだ、そんなことか」と言わんばかりの呆れ顔だった。


「いや、けどいつも出かける前に茶菓子買って行くんですよ?」
「誰かの所にでも行ってんのか」
「間違いないと…」
「女だな、あまり探ってやんな」
「女…ですか?」
「…まぁ、あの事件の後だからな。山崎、極秘で総悟の行動を調べて、俺に知らせろ。わかり次第だ。もしかしたら、あのヤロウ、変な気起こしたかも知れねぇからな」
「はい」


山崎は短く返事をすると、土方の部屋を後にした。土方は机にある、その事件の書類を横目で見た。


同時刻、最近降らない雨が恋しくなりそうな程、非番の沖田の体は外に出るのを渋がらせた。毎日行くとは言っていないし、毎日行っているわけでもない。だから、今日は行かないでおこう。そう思っていたが、内心あの縁側で待っていられても困る、そう思った沖田は屯所を出た。


途中の店で茶菓子を買った沖田は、真っ直ぐ家に向かって歩き出した。私服で歩く街並みは、どこか威圧感は取っ払っていた。


「今日も来てくれたのね」


そう言ったサツキは、あいにく縁側で待っていた。茶菓子を差し出すと、サツキは「ありがとう」と言って受け取った。


「茶、入れますぜ。」
「あぁ、ありがとう!台所は中に入ったら右側の廊下を突っ切れば…」
「了解でェ」


そう言った沖田は、サツキのデカい一軒家に入って行った。



何気ない、やり取り。



同時刻、さっそく出かけ先を付けてきた山崎は、その光景を見て、唖然として立ちすくんでいた。見覚えのある女の顔を忘れるわけもなく、ただ山崎はすぐさまその場を後にして、屯所へ戻っていった。








2010/6/14

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