長編【壱】

□よん
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「また来てくれたんだね」


そう言ったのは、笑顔で迎え入れてくれたサツキだった。

あれからまた幾日と経ち、沖田は外回りの度に真選組の服のまま何度か家に寄った。周りの目を気にしながら、丁度玄関から見えない場所に座るようになった。互いに互いのことを話すが、沖田は必要以上の事を話さなかった。そんな態度に、サツキは笑って話を聞いていた。


「総悟くん、家族は?」
「姉がいます」
「あ、上なんだ。一緒だね。私は兄だし」
「そうですね、まぁ俺ァ姉上ですがね」
「総悟くん、若いでしょ。お姉さんも、きっと若いよね」
「それなりに」
「私の兄も、あまり歳の差なかったんだ」
「そりゃァ、兄妹喧嘩とか多そうな」
「いや、兄さんが私に対して過保護だったからね。喧嘩は少なかったかな」
「俺も、そうだったなァ」


空を見ながら、自然とする会話に潜む過去になった言葉に、でもきっと、その姉上よりいつかきっと年老いてしまうんだろうということは、けして口にはしなかった。


暖かい日の光を浴びながら、会話を続けて行くと、歳の話や家族の話、自分の趣味の話や住んでる場所の話。最近の出来事。そして仕事の話を尋ねられた。


「総悟くん、仕事してるの?」
「…一応、何でも屋ってところでェ」
「何でも屋?」
「そのオーナーが、グーダラなんで休みが多いんでさァ」


話の種を、一番身近な真選組と万事屋の話を混ぜて話した。働いている場所は万事屋で、住んでる場所はかぶき町のスナックの二階。上司はケツダルマのストーカーやマヨラーや糖分教、年下には生意気なチャイナに地味な眼鏡とかいる。と話した。


最近の出来事などは、いつも周りで起きる出来事の話をした。サツキはその話を楽しそうに聞いていた。


「糖分とマヨネーズで、いつも争ってんでェ。どっちも勘弁でさァ。」
「あら、私ならお酢をかけるわ」
「お酢もどうかと思うぜ?」
「いや、美味しいわよ」
「いやいやいやいや」
「今度、試してみて?それで?」
「そしたらチャイナのヤロウが…」
「あら、本当に仲いいのね」
「冗談」
「冗談よ」


クスクスと笑うサツキに対して、沖田そっぽ向き、暖かい空気が横切った。



「バイバイ、また来てね」


帰り際に、沖田の背に向けて放った言葉は無言によって跳ね返りそうな勢いだった。







2010/6/7

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