□無題/土銀
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一方、神楽と新八が小走りで銀時に駆け寄った。横に並び、銀時の顔をのぞき込むと、不機嫌そうな表情をしていた。


「ぎ、銀さん?」
「あんの、ヤローが!!」


拳を握り、ワナワナと震え上がる銀時を見て、神楽と新八は顔を見合わせる。


「銀さんが土方さんに言いたいことがあるってのは聞きましたけど…。結局、何の用だったんですか?」
「わざわざニコチン野郎に会いに行くなんて、銀ちゃんにしては珍しいアル」
「俺だって、たまには暇つぶしで外ぐらいでらァ。用はさっき聞いたとおりだ。あのヤロー、次会ったらぶっ殺す。」


真っ直ぐの視線で怒りを見せる銀時に、神楽と新八は声をそろえて言う。


「「次って…」」
「いつアルか?」「いつですか?」


その言葉に、銀時が小さくうなだれた。


「俺に聞くな、いつかだよいつか。」


銀時が右手を上げて、ヒラヒラと振った。銀時の猫背な背中には哀愁感があり、なんとなく「聞くな」と言わんばかりだった。







あれ?

「遅くなってすみません」とお盆の上にお茶を乗せやってきた山崎は、辺りを見渡し、縁側に腰掛けていた銀時や新八と入れ違いに、土方と沖田が座っていたことに首を傾げた。


「ダンナたちはお帰りなったんですか?」


お茶を土方に手渡すと、それを音を立てて飲み始める。沖田は隣でお菓子の箱に手を伸ばし、せんべいを食べる。土方が湯飲みから口を離すと、呟く程度の声で言う。


「帰ったな」
「あっ、そうなんですか。ダンナ、何の用だったんですか?」


山崎が尋ねると、「さぁな」という返答が返ってきたので、山崎はさらに首を傾げた。同時に、せんべいを食べ終えた沖田は、さらに箱に手を伸ばし、山崎に視線を置き換えた。


「山崎、茶ァ」
「隊長ォ、そういうのはいっぺんで済ませてくださいよ…」


しょうがない、と言った山崎はしぶしぶ台所に向かっていった。姿を見送ると、沖田はまたせんべいを口に運ぶ。


「あっ、アリでさァ」


足元に零れ落ちたせんべいのカスを、せっせと運ぶアリを見て、小さく沖田が呟いた。土方はタバコを取り出して火を点けて、煙を吐き出し、呟く。


「甘」


半分だけ残した食べかけのせんべいを、土方は横目で眺めた。





万事屋。

家に戻るなり、銀時と神楽はソファーに座って、テレビに釘付けだった。今日から始まるドラマの再放送を、今回こそ一つも見逃さずに見終えたいと思い、全12回の一本一時間ドラマ、1日三本の放送の内の一本を見始めていた。

時計は長い針と短い針が同じ、参を指し示していた。台所から新八はお盆の上に湯飲みを三つ乗せやってきた。


「はい、どうぞ」


それぞれ前のテーブルに湯飲みを置くと、銀時と神楽はお茶を手にして、音を立てて飲んだ。


「あー、やっぱうめぇな。茶」
「当たり前ヨ、この国はコレが取り柄ネ」



神楽がお茶を流し込むと、新八が遠慮がちに「一応、侍の国なんだけどね」と付け加えた。したら銀時は、テレビを見ながらさりげなく呟いた。


「てか、このヒロインかわいくね?」





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