雑種王子
□雑種王子・4
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「結構キツいな…」
トモリッシュが呟くのも無理はない。
いくら小柄で軽いとはいえ、エルフ族の族長を背負ったまま駆けるのは、結構重労働だった。
「仕方ないじゃないか。トモが急ぎすぎなんだよ」
ドーイは悠々と歩いている。しかし、その足下の草たちはドーイの歩いている所だけさざめき、まるで動く道のようになっていた。
「お前はラクだよな。草が勝手に動いてくれるんだから」
「私は、ただお願いしただけだよ。トモに置いていかれないように、少し手助けしてほしいとね」
獣人の縄張りの西端。キルライヤが魔族を見たという場所だ。
途中何度か休んだが、エリオネスよりは早く着いたようだ。集落には、キルライヤはまだ帰ってなかった。
「私は、先に族長を送ってくる。トモはどうする?」
「…せっかくだ、ミヤに会いに行く」
精霊の森の右手には、人間族の縄張りがある。
「確か…ヒゴモリの村、だったな」
「ああ、そうだね。私も、族長を送ったらそっちに行くよ」
ドーイはそう言い、族長を支えてフワリと浮かぶ。
そのまま飛んでいく姿を見て、トモリッシュは思わず呟いた。
「…背負う必要、ねえじゃん」
さわさわと、風が草を撫でていった。
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