†捧げ物†

□確かな答え
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「孫市っ!大変さね!」
「祝融さん?どうしたんだい?そんな慌てて。麗しい貴女のお顔が台無しだ」
「そんな呑気な事言ってる場合じゃないさね!敵が……敵将の前田慶次が単身で乗り込んで来たんだよ!」
「は?……慶次が!?」




正々堂々と戦う事を筋とする慶次がまさか遠呂智軍の援軍として来たとしても夜襲に来たとは思えない。
孫市は顎に手を当てながら立ち上がった。




「慶次が乗り込んで来るって事は……戦絡みじゃないんでしょう?」
「ああ。それが……孫市、アンタと酒を酌み交わしに来たって言ってるけど……どうするんだい?」
緊迫し得物を握って尋ねてくる祝融を手で制して孫市は入口の幕を捲った。
「分かった。慶次がそう言うならそうなんでしょう。あいつは不意打ち突いておっぱじめる程、卑怯じゃないさ」
片手を挙げて応えると孫市は慶次のいる場所へ向かった。
























この異世界には月が無い。いつも赤紫の不気味な雲が天を覆い、明るい太陽さえ隠す。




孫市は元の世界の美しい月を思い出し舌打ちを打った。
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