†捧げ物†

□取持つは、蝶
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話し終えた時にはあの場面を思い出し、孫市は泣きそうになった。が、笹舟のいる手前そんなヘマはしない。
ぐっと堪えて耐えると笹舟が溜め息を吐いた。




「そら、前田の旦那が悪いわぁ。孫はんは悪ない。その子は見覚えあらへんのどすか?孫はん」
「…ねぇ。遊び相手ってカンジじゃなかったし…」
「ほなら誰なんやろ?」
遊女が首を傾げて紅を差していると下から声が聞こえた。








「笹舟〜!前田の旦那をもてなしてやんな!」
「前田の旦那?…成る程。あい、よう候」
「え?姐さんちょっと!」
今この場に慶次を呼ばれてはマズい。孫市は慌てて笹舟に声を掛けるが、笹舟は孫市の唇に指を立てて黙らせた。
「しぃっ。孫はん、その衝立の後ろにおったって。うちが真相聞き出したります」
「姐さん!?」
笹舟は見事な菖蒲が描かれた衝立の後ろに孫市を隠して、自分はその衝立の前に座って誤魔化す。
直ぐに慌だしい足音が聞こえてきた。
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