kids Teru ver.TEXT

□★プロローグ☆
1ページ/2ページ

今年一番の寒い冬の日曜日のことだった。イタリア系アメリカ人のステファン・ジェバンニは、とりわけ目的もなく、近所を散歩していた。
日本滞在年数は、学生時代に留学してからになるので、3年目になる。就職先はFBIであったが、どういう訳か、日本での仕事がメインであったので、こうして滞在していた。四季折々の情緒や自然の美しさといった、日本特有のものは嫌いではなかったが、都市部に住んでいたせいか、どうも隣人同士の繋がりの薄さや表面上のみの人間の繋がりは、好きではなかった。それは、現在、ステファンが独り暮らしで独り身であるということも関係していたのだろう。
寒いので、早めに家に帰って昼食でも用意しよう、と思い、ステファンは歩みを速めた。と、その時であった。
「ひ…っ、く……、ぐす…ん…っ、」
何やら、すするような音が聞こえてきた。
音のする方へと向かうと、長めの黒髪が綺麗な、日本人の幼児が、すすり泣いていたのだった。

「どうしたの…、お嬢ちゃん?」
ステファンは、視線を幼児に合わせ、問い掛けた。
「ぼくは…、おとこだ…っ、ひ…っく…、」
泣きながらも、女の子に間違われたことに、抗議された。ステファンは少年の頭を撫でた。
「ごめんね…坊や。ママは…?」
「ぼくは、『てる』って、いうんだ…。かあさんは…いない…。すてられたんだ…ぼく…っ、」
捨てられた、という彼の言葉に、ステファンは何も言うことが出来なかった。
だが、こんな寒い日に外にずっといては、風邪どころか、最悪凍死してしまう危険性もある。
「僕のおうちへ、おいで…。」
ステファンは彼の手を引き、家へと向かった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ