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□heartplace
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誕生日というものが、こんなにも嬉しく、楽しい…物心付いた頃は、思いもしなかった。
だが。あの時…ステファンが、自分を見付けてくれた時から、変わった。彼は、様々な楽しい事、素晴らしい事を教えてくれた。誕生日も、その一環である。
大好きな人と共に過ごす誕生日がどんなに嬉しいものか、わかった。

そして今年は、恥ずかしくも身も心も結ばれてから初めて迎える、誕生日。
それを意識した照は、頬を赤く染めた。
日常は、恋人らしい事をする以外は何ら変わりはなかったが、誕生日はどうなるのだろうか、近づいてくるに連れて、楽しみでもあり不安でもあった。


あれ…?
体中を襲う不可思議な浮遊感に、照は辺りを見回した。
初夏らしい晴れ間の中、次々に映り変わっていく、景色、自身の身体に着用されている、余所行きの洋服、心地よいBGM、そしてすぐ隣には、楽しそうに鼻歌を歌いながら運転をする、ステファンの姿。
そう、自分は今、ステファンの運転する車に乗せられているのであった。

「よく…眠れた?」
目覚めた照に気付いたのか、ステファンはにこっ、と微笑みながら話し掛けてきた。
「えっ…?」
照は、置かれている状況をすぐには把握出来なかったのだった。
昨夜、ステファンが帰宅してすぐに熱い包容を受けて、そのまま寝室へと運ばれ…意識がハッキリしていたのは、そこまで。
「今日、何日か…分かる?」
今日が何日か…?月が変わり6月になったことは分かっていたが…?
「7日、6月7日だよ。照にとって、大事な日じゃないか…!」
6月7日、自分にとって大事な日…そうだ、誕生日だ!そこでようやく気付いたのだった。
だから。ステファンは祝う為にわざわざ連れ出してくれたのか…。
だが。まだ、不可思議な点があった。今日は、確か、木曜で、平日の筈。ステファンの仕事や、自分の学校は…?
「お仕事や、学校は…っ?」
いてもたってもいられなくなり、尋ねてみた。
すると、
「ん…?僕は有給を申請したし、学校には、一ヵ月前から、僕の用事で休ませて下さい、って連絡入れておいたんだ。」
と、何の悪びれもなく言われた。
「それは、ちょっと、不味いんじゃ…、」
職場の有給申請はともかく、嘘付いて学校を休むなんて、よくないのでは…と、超が付くほど真面目な照は思った。
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