ソレイユの悲劇

□第五話
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誰と話すでもなく、あいさつもなくワイヤはまっすぐに廊下に出た。
廊下も教室と雰囲気は変わらない。楽しそうにしている年の近い少年や少女がいる。
ワイヤの父であるクロエが実権を握ったパラソル国では、ワイヤは義務教育年齢らしい。自分の出身国の義務教育は終了したのに、また教育を受けている。
こちらの義務教育の方が期間が長いのでもちろん内容は難しいのではあるが、今までクロエに習ったことがあったり自分で調べたことがあったりして、学習自体も楽しくなかった。
校舎から出る。生徒数は教室より少ないが、だからどうというわけもない。
父さんは集団で義務教育を受けられるのはいいことだと言ってるけど、僕にはそうは思えないよ。
「はぁ……」
だからというか、ワイヤはめったに学校には行かない。
行くのはテストと、クロエに「たまには学校に行ってきたらどうだ」と言われた時くらいである。
学校から寄宿舎はそう遠くはない。1時間も歩かない。学校についてうだうだと、不平を並べていたらもう寄宿舎が見えてきた。
今日はいつもとすこし違う道から帰ってきた。ゆるやかな坂を少しあがったら寄宿舎の土地に入る。
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